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2-1★流れ星はのぼれない(1)
木々を分け入っていくと、その光はだんだん近づいてきた。
しかし心なしか、徐々に弱まっているように感じた。
消えてしまわないうちに早く辿り着かなくちゃ……!
穂詩歌(ほしか)がはやる気持ちのまま駆けていくと、
「あっ!」
光の元に辿り着いた。
が、思わず声を上げてしまったほど、それは驚くべき光景だった。
「ウ…ウゥ……」
うめき声が聞こえたかと思うと、光がさらに弱まる。
穂詩歌はそっとその光の元にしゃがみ込んだ。
「……星?」
その声にハッとしたように、光はバッと立ち上がった。
……と言っても、その高さは、しゃがんでいる穂詩歌のさらに半分くらいだ。
しかし次の瞬間、
「イッッッッッテーーーーーーーーッッッッッ!!!」
この世の終わりみたいな叫び声を上げ、星らしきものは再びコロンと横たわってしまった。
穂詩歌はびっくりして一度飛び退いたが、慌てて駆け寄り直す。
「大丈夫ッ?! ケガしてるの?」
「……そうみたいだ」
と、光がフッと消えた。
辺りが急に真っ暗になる。
「わっ!」
反射的に穂詩歌は、小動物みたいにピタッと止まる。
突如訪れた闇の恐怖に襲われ、必死に叫ぶ。
「星さん! 星さんっ、どこーーーッ?!」
さわぐ穂詩歌の声の合間をぬって、力ない声が静かに答える。
「……ここだよ、ここ……君のすぐ下」
声は思いのほか、すぐ近くだった。
穂詩歌はしゃがみ込み、両手をペタペタとはわす――と、すぐに固い物に触れた。
ほんのりとだけ光が復活する。
「星さん……っ! 良かった〜」
穂詩歌は安堵の笑みをこぼす。
真っ暗闇にひとりぼっちはやっぱり怖い。
光が灯っている、誰かがそこにいる、ただそれだけでなんて心強いんだろう!
穂詩歌はその小さな星に抱きついて、ほおずりをした。
「——って言うかさ」
されるがままになっていた星は、なんとも言えない表情のまま口を開く。
ちょっぴり頬がふくらんでいる……ようにも見える。
「ぼくは、"星さん"じゃなくてさ」
「え?!?!」
その言葉に穂詩歌は思わず手を離し、目をまん丸にする。
「じゃあ何っ?!」と言わんばかりに、その黄色い物体をジーッと見つめる。
それから少しして、「あっ!」と声をもらし、顔をほころばせた。
「わかった! ただの星じゃなくて、"流れ星さん"! でしょー。ごめんね。そうだそうだ、さっき流れてきたの、あなたね!」
一気にまくしたてられて、星は気圧されたようにおろおろと言い返す。
「いや……確かにぼくは星で、流れ星でもあるんだけど、そうじゃなくてさ……」
「あっ、やっぱり! 流れ星さんなんだッ!!」
まだ何かすごく言いたげな流れ星の言葉をさえぎって、穂詩歌ははしゃぐ。
だって、星どころか流れ星だったのである。
星も初めて見たけれど、流れ星の方がもっとすごい気がする。
だって、なんて言ったって流れ星は、お願い事を叶えてくれるのだから!
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