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「それなのに、もう新商品を開発したいってどれだけ仕事好きなの?」
「元々開発時に出ていた話でしょ」
「だからって、こんなにすぐ取り組む必要がある? お願いだから仕事が恋人だなんて言わないでよ」
「蘭もでしょ」
「今日の私はさっさと仕事を切り上げて、六時半から合コンですけど?」
現在六時を少し過ぎたところだ。
言われてみれば彼女はすでに帰り支度を済ませている。
「今、コンパも婚活にも興味はないの」
「その台詞、一度でも婚活してから言いなさいよ」
親友は目を細めて、しれっと言い返してくる。
「あ、あの仙田さん、お話中失礼します。長谷部さん、専務室に至急来るようにと言づけがありましたが……」
私たちの遠慮ない物言いの中、おずおずと部下のひとりが口を挟む。
恐らく専務秘書の鹿賀さんから内線電話がかかってきたのだろう。
「なにかあったの?」
「いえ、急ぎとだけ伝えてほしいと……」
「わかった、ありがとう」
返答すると、部下の女性は明らかにホッとしたような表情を浮かべた。
当社専務は学生時代からの友人で、出会った頃は彼の会社に就職するなんて思いもしなかった。
「ほら専務だって仕事中よ?」
「専務は眞玖と違って、毎日降るような縁談がきてるでしょ。しかもあんな極上の美形に婚活は不要よ」
腕時計に視線を落とした親友が容赦なく言い放つ。
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