1.友人+仕事>恋人

5/10
前へ
/156ページ
次へ
「それなのに、もう新商品を開発したいってどれだけ仕事好きなの?」 「元々開発時に出ていた話でしょ」 「だからって、こんなにすぐ取り組む必要がある? お願いだから仕事が恋人だなんて言わないでよ」 「蘭もでしょ」 「今日の私はさっさと仕事を切り上げて、六時半から合コンですけど?」 現在六時を少し過ぎたところだ。 言われてみれば彼女はすでに帰り支度を済ませている。 「今、コンパも婚活にも興味はないの」 「その台詞、一度でも婚活してから言いなさいよ」 親友は目を細めて、しれっと言い返してくる。 「あ、あの仙田(せんだ)さん、お話中失礼します。長谷部(はせべ)さん、専務室に至急来るようにと言づけがありましたが……」 私たちの遠慮ない物言いの中、おずおずと部下のひとりが口を挟む。 恐らく専務秘書の鹿賀(かが)さんから内線電話がかかってきたのだろう。 「なにかあったの?」 「いえ、急ぎとだけ伝えてほしいと……」 「わかった、ありがとう」 返答すると、部下の女性は明らかにホッとしたような表情を浮かべた。 当社専務は学生時代からの友人で、出会った頃は彼の会社に就職するなんて思いもしなかった。 「ほら専務だって仕事中よ?」 「専務は眞玖と違って、毎日降るような縁談がきてるでしょ。しかもあんな極上の美形に婚活は不要よ」 腕時計に視線を落とした親友が容赦なく言い放つ。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4511人が本棚に入れています
本棚に追加