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「とにかく今回はあきらめるけど、例の婚活パーティーだけは頼むわよ。取引先からのご指名なんだから」
「筒美ホテル主催のパーティーでしょ、わかってるわよ。ご指名って、蘭が独身の親友がいますって宣伝したからでしょ」
当社取引先のホテルが、婚活パーティーを新たな試みとして開催すると少し前に親友から聞いた。
その場にモニターとして参加してほしいと先方に頼まれたらしい。
「婚活中だと以前雑談したのを、先方が覚えてくださっていたの。それで決まった相手がいないなら是非って招待されたのよ。取引先だしひとりで参加できないでしょ」
「……それはそうだけど」
「費用も不要、信頼できる主催者なんて、初めての婚活パーティーにはうってつけでしょ? なにより眞玖の片想いがふっきれるかもしれないし」
さり気なく付け加えられたひと言に、蘭の思いやりを感じる。
「待っていても白馬の王子様はやってこないんだし、こっちから迎えに行かなきゃ」
茶化した口調が、今の私には有難い。
「そうね、仕事の一環でもあるわけだし」
「よかった、じゃあね」
肩にバッグをかけ直し、親友は颯爽とフロアを出て行った。
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