8.悲しいデート

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「もちろん長谷部の言い分もわかる。だが俺に言わせたら、ふたりとも圧倒的に会話が足りてない。お前たちの考え方は似ている部分も多いが、勝手な予想で相手の気持ちをはかりすぎなんだ。匡は器用なはずなのに、長谷部には不器用になるんだな」 「……会話はきちんとしているわ」 蘭にも似たような忠告をされたと、ふと思い出す。 「本音をきちんと伝えているか? お前たち、友人だった頃の物差しで相手を見ていないか?」 「どういう意味?」 「ただの友人に見せる顔と最愛の恋人に見せる顔は違う。特に匡のように独占欲の強い男はな」 ニッと口角を上げる友人は、なにかしら含みのある言い方をする。 「匡は束縛されるのが嫌いなんだから、相手を縛ったりしないわよ」   「……長谷部も大概鈍いというかズレてるな。ふたりとも学生の恋愛じゃないんだぞ。どれだけ無器用なんだ。考え方がすれ違っているとは思っていたがまさかここまでとはな。アイツはなにをやっているんだ」 友人は眉間に皺を寄せて、自身の額を長い指で押さえる。 「長谷部、昨日匡が会いにきたのを申し訳ないと考えているだろ」 思考を読まれ、目を見開く私に専務がため息交じりに言葉を続ける。 「そういうところだ」 友人の忠告の真意がわからず混乱していると、専務の内線電話が鳴り響いた。
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