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五十嵐さんの一件の情報源がわかり、小さく息を吐いた。
「五十嵐の御曹司が来社の際は、今後同席するなよ」
私の身を案じ、優しい指示を出す友人と同僚には、感謝の気持ちでいっぱいだ。
「大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます」
「困ったときはきちんと報告するように。もちろん匡にもな」
「……はい」
返事をし、一礼して退室する。
まだ昨夜の匡の一件が尾を引いている。
私のため、と峰岡専務は言うけれど本当にそうだろうか?
匡にとって、私には話しにくい事柄がほかにもあるのではと疑心暗鬼になってしまう。
峰岡専務は五十嵐さんの件を気にしていたが、きちんと断っているし気持ちを受け入れるつもりもない。
穿った見方をすれば、五十嵐さんは自身の妹にとって邪魔な私を穏便に排除したいだけかもしれない。
どちらにせよ、心配をかけるような話を匡が大変な今、伝えたくない。
ましてや嫉妬心をあおりたいわけでもない。
『長谷部、忠告しておく。アイツの独占欲を甘く見るなよ』
峰岡専務の先ほどの忠告が脳裏を掠める。
私の考えは間違っているのだろうか?
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