8.悲しいデート

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数日経った週末の夜、匡からメッセージが送られてきた。 【明日、デートしよう】 素っ気ない一文を食い入るように見つめる。 匡が心配で様子を見に行こうと思っていたところだった。 【仕事は大丈夫なの?】 【ああ、気にするな。明日、十時に迎えに行く】 すぐに返されたメッセージを目にした途端、慌てて匡に電話をかけた。 『眞玖から電話なんて珍しいな』 「あ、あの、明日ってどこか行き先は決まっているの?」 数日ぶりに耳にする低音に心が甘く疼き、焦りが募る。 『水族館に行かないか? 久しぶりだし、以前行きたいって話してただろ』 そこは学生時代に何度か三人で遊びに行った思い出の場所だった。 そう言えば、ずいぶん前にそんな話をした覚えがある。 「……覚えてくれていたんだ」 『当たり前だろ』 端的な返答に、胸が痛いくらいに締めつけられる。 この人はどうしてこうも簡単に私の心を揺さぶるのだろう。 「じゃあ駅前で待ち合わせしましょう」 『いや、迎えに行く』 「ううん、たまには待ち合わせしてみない?」 疲れている彼に負担をかけたくないと考え、早口で説明する。 なんでわざわざ待ち合わせ?と訝しみながらも、匡は了承してくれた。 『じゃあ明日な。おやすみ、眞玖』 「おやすみなさい」 通話を終えた後、元々準備していた服を奥へ押しやり、もう一度吟味しなおす。
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