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数日経った週末の夜、匡からメッセージが送られてきた。
【明日、デートしよう】
素っ気ない一文を食い入るように見つめる。
匡が心配で様子を見に行こうと思っていたところだった。
【仕事は大丈夫なの?】
【ああ、気にするな。明日、十時に迎えに行く】
すぐに返されたメッセージを目にした途端、慌てて匡に電話をかけた。
『眞玖から電話なんて珍しいな』
「あ、あの、明日ってどこか行き先は決まっているの?」
数日ぶりに耳にする低音に心が甘く疼き、焦りが募る。
『水族館に行かないか? 久しぶりだし、以前行きたいって話してただろ』
そこは学生時代に何度か三人で遊びに行った思い出の場所だった。
そう言えば、ずいぶん前にそんな話をした覚えがある。
「……覚えてくれていたんだ」
『当たり前だろ』
端的な返答に、胸が痛いくらいに締めつけられる。
この人はどうしてこうも簡単に私の心を揺さぶるのだろう。
「じゃあ駅前で待ち合わせしましょう」
『いや、迎えに行く』
「ううん、たまには待ち合わせしてみない?」
疲れている彼に負担をかけたくないと考え、早口で説明する。
なんでわざわざ待ち合わせ?と訝しみながらも、匡は了承してくれた。
『じゃあ明日な。おやすみ、眞玖』
「おやすみなさい」
通話を終えた後、元々準備していた服を奥へ押しやり、もう一度吟味しなおす。
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