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初日が終わり、みんなは早速スマートフォンで連絡先を交換したり、記念に写真を撮ったりしている。
瑞希は、夕方からアルバイトだったので、早めに帰って少し寝ようと思い、帰り支度をしていた。
「コーハラくん」
朝、話をした巻き毛の女子が話しかけてきた。
「ああ、おつかれ」
「おつかれさま。これから前沢くんと紗英サエも一緒に4人でカラオケ行かない?」
クルンと上がった睫毛の瞳をパチクリさせながら聞かれる。
「あーわりぃ。俺、バイトあるから」
瑞希は一応申し訳なさそうに答える。
「えー、そうなのぉ?じゃ明日は?」
なんでも自分の思い通りにならないと気が済まないお姫様のような女。
心の中で、ウザ…と思いながら「ごめんなー、明日も無理なんだわ。ほら俺、金儲けが趣味だからさ」と言って笑う。
「そっかあ。じゃあ行ける日あったら連絡して?」
巻き毛は、スマートフォンを掲げてニコリと笑う。
きっと色んな男に褒められた笑顔なんだろう。確かに美人だけれど、心は動かなかった。
「無理無理!誘っても来ないよー、瑞希ちゃんは」
前沢がそう言って無断で肩を組んできた。
瑞希より少し身長は低いけれど、割にガタイのいい前沢は、女にモテたいという理由だけでバスケ部に入っている。
「そうなの?そういうの余計燃えちゃう、私」
と巻き毛に言われ、少し背筋が寒くなった。
「はあ?やめとけって、俺のほうが絶対楽しいから。コイツモテるくせに彼女作ったことないの」
褒められているのかバカにされているのか分からない。
けれど、本当のことだった。
ヘラヘラ笑うしかなく、瑞希は、ただ早く帰って眠りたいと考えていた。
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