秘密

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秘密

家に帰ると、炒飯にラップが掛けられテーブルに置いてあった。 『食べ終えたら、洗っといてね。私は20時くらいに帰ります』 と母親からのメモが付いていた。 手洗いを済ませ、ジャージに着替えて、水と一緒に炒飯をかき込んだ。 忙しい中、ちゃんと食事を手作りしてくれる。 両親が離婚して以来、母親とは、ほとんどすれ違いの毎日だった。 母親は、朝早く家事を済ませ、スーパーの開店前の品出しのパートに行き、瑞希が学校に行っている間に、製菓工場の仕事に行く。 瑞希は、携帯代と定期代、あとは自分の小遣いを稼ぐ為に、夜の工事現場や夜中のファミレスでアルバイトをしていた。 けれど、母親が毎日、父親に罵倒されていた地獄のような日々を思えば、今、本当に幸せだと思う。 瑞希に手を出される前にと、母親は瑞希の手を取って逃げるように父親の元を離れた。 それからもう五年になる。 今ではこの生活が当たり前になり、良くも悪くも何も無い毎日に、瑞希は満足していた。 「ふう…」 ご馳走様でした、と独り言を言って、ゴロリと畳に寝転んだ。 ふわ…と眠気が襲ってくる。 心地良さの中で目を閉じると、何故か美緒の顔が浮かんできた。 夢の中で、美緒が妖艶に誘ってくる。 瑞希の身体に絡みついてキスをせがむ。 ハッとして目を開けると、夢精してしまっていた。 「ヤバ…」 瑞希は、慌てて起き上がり、ジャージと下着を脱ぐ。 何やってんだ…と情けない気持ちになりながら、台所のシンクで炒飯の皿と一緒に下着も洗った。
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