悩み

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「経験が、ないんです」 顔を上げて美緒を見た。 美緒は全てを悟ったように「あ、それでか」と言った。 「手、出して」 瑞希が手を出すと美緒は、そっとそれを握りしめた。 瑞希は、胸がキュッとなる。 「例えば、好きな人とだったらこうやっててもドキドキするし、幸せじゃん?」 「あ、うん」 「だからそれでいいんだよ。何かしなくちゃいけない使命がある訳じゃない、特に男同士はね」 と声を潜めて言った。 「やっぱ行く、先生の部屋」 「だーかーらー」 「あ、美緒の部屋」 「よろしい」 美緒は笑って、二人で立ち上がった。
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