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翌朝。
起きると美緒はもう出勤した後だった。
簡単な朝食の隣にメモと鍵が置いてある。
『こんなタイミングで悪いけど、渡そうと思ってた鍵。使ってね。美緒先生より』
(わ…これが、合鍵ってやつか)
瑞希は少し浮かれて、それを持ち上げて眺める。
家の鍵をつけているお揃いのキーホルダーに取り付けた。
美緒とのつながりが強くなったように思う。
けれど、浮かれている場合ではなかった。
恐る恐る母校のサイトを開き、クチコミを見る。
案の定、新しい書き込みがあった。
『ゲイでビッチ、教え子をたらし込む淫乱教師MK。こんな奴に教えられる子供達がカワイソウ』
「っんだよ!これ!」
瑞希は、怒りのあまり声に出して言った。
おそらく削除されるだろうが、また書き込まれるだろう。
学校に連絡してもいいんだろうが、評判を気にして、美緒が辞めさせられる可能性もある。
どうしたらいいのか迷っていると、スマートフォンが鳴った。
優美からの着信。
『もしもし?香原くん?書き込み見た?!もうびっくりしちゃったよ!』
同級生の間でSNSを通じ、あっという間に広がっているらしい。
「あー、観た」
瑞希は、なるべく感情を出さないように言う。
『分かってんの?誰がやったか』
「うん、多分。でも先生に迷惑かかるといけないから、何も出来ないよ…」
瑞希は、少し泣きそうになってくる。
どうしようもなく自分が情けない。
『そうなんだ…。でも、みんなで反対の書き込みしようって話になってるよ?』
「そうなのか?」
『うん。みんな美緒先生のこと大好きだったし。少しでも役立てばって』
「そっか」
瑞希は、自分も関わっていることなので、なんだか申し訳ない気持ちになった。
『アタシも書き込みするつもり。香原くんは、先生のことよろしくね』
「わかった」
そう言って電話を切った。
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