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深夜。
仕事を終えて部屋に戻ると、まだリビングに灯りがついている。
「あー、おっかえりぃー」
瑞希がリビングに入ると美緒がヘラと笑いかけてきた。
赤い顔で、グラスを傾けている。
ローテーブルには、空き缶が幾つも転がっていた。
「また二日酔いになりますよ」
瑞希が空き缶を集めて片付けようとすると、グッと腕を掴まれた。
「わ、何?」
「こっち来て、座って」
美緒が甘えるように言った。
瑞希が隣に座ると「暫く休みなのー。オレ」と美緒が言った。
「え?」
「なんかさー、教育委員会からお許しが出るまで休めってさ」
美緒は、グラスの焼酎のソーダ割りを飲み干す。
「すいません…俺のせいで…」
瑞希は俯いた。
「え?なんで?瀬戸くんがやったことなのに、瑞希は関係ないよぉ。それに、たまには、ゆっくり休みたかったし、ちょうどいいよ」
こんな時なのに、美緒はご機嫌で、またソーダ割りを作っている。
「けど…」
「みんながさぁ、擁護する書き込み、沢山してくれたんだよねえ。オレ、嬉しくって」
美緒は赤い目をしている。
今にも泣きそうだった。
「そうなんだ!」
瑞希は、スマートフォンで書き込みを確認する。
『MK先生は、そんなひとじゃない』
『MK先生、大好き!辞めさせないで!』
『MK先生の元教え子です。いつも相談に乗ってくれた素晴らしい先生』
etc……
「ほんとだ…」
「もし今の学校クビになっても、そうやって皆が書いてくれたことが嬉しいからさぁ。もういいんだよ」
そう言ってポロ…と涙を流した。
「先生…」
瑞希は、美緒を抱きしめる。
「おおっと、零れちゃう」
美緒は、グラスをテーブルに置くと、瑞希を抱きしめ返す。
二人で唇を合わせた。
「どんなことがあっても、俺、離れないし、先生を守るから」
美緒の目を見て言った。
「ありがとね」
フフっと笑う美緒は、もう今の学校に何の未練も無さそうにみえた。
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