突然の別れ

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突然の別れ

あれから1か月後 朝食の用意をしていると、彼は、今日は早く出るからと、急に玄関の扉をバタンと閉めて出ていった。 なぁんだ。早く言ってくれれば良かったのに・・・・ 暖かな日差しの下で、日向ぼっこしていたコイちゃん(私の大事な飼い猫)が、ジッと彼が去った扉をみていた。 いつもは何があつても動じず、振り向きもしないのに、「どうしたの?」 と、コイちゃんに言葉を発した時、玄関の方から、 「まこなら・・強いから大丈夫だよな!」 ん?さとし戻って来たの???慌てて玄関の方を振り向いたが、誰もいない。 何?空耳? 出勤時間が迫っていたので、「コイちゃん、早く帰って来るから、お留守番頼むね」と言って扉を閉めた。 朝の声が、気になってお昼休みに、さとしに電話を入れたが、繋がらなかった。 忙しいのだろう・・・帰ってから聞いてみよう。と、仕事に戻った。 帰宅して急いで夕飯の支度にとりかかった。 そこへ、さとしが帰ってきた。 「もうすぐ出来るから、お風呂、先に入って待ってって!」 「ご飯いらない・・・ちょっと話があるから、こっちに来て!」 「えっ?何?」 彼は何か言いにくそうな顔をして、 「別れてほしいんだ」ボソッと言った。 耳を疑った。 「いきなり?はっ?なんで?理由は?」 「絵美が・・・俺と一緒になりたいって・・・」 「絵美?あの~絵美って?あの絵美?私の親友だよね?うそでしょ?」 「少し前から二人だけで会ってた。あいつ、まこと違って、よく泣くんだよ。 すごく頼ってきて・・俺を必要って言ってきた」 私は、さとしの前でも愚痴を言ったり、苦しくても泣くまいと頑張ってきた。 小さい頃からの習性で、自分の事は、全部自分で解決してきた。 頼りたくても頼れなかった・・・ それが悪かったの? 「ごめん。もう決めたんだ」 それだけ言って玄関に向かった。 そして・・・ 「まこなら・・強いから大丈夫だよな!」 今朝聞いた声が、再び聞こえて、バタンと扉が閉まった。 私は一度に恋人と親友を失った・・・・
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