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遂に訪れた交番勤務最後の日、俺は自分の机を整理し終えた。
すると、交番に康太と瑠美ちゃん、それに宮空先生まで来ていた。
「おまわりさん、今日が最後なんだろう」
「そうだが、お別れの挨拶でもしに来たのか?」
「卒業式」
「え?」
俺が驚いていると康太がもう1度言った。
「卒業式だよ、俺達がしてやるよ」
「康太君の提案で簡単な卒業式をしましょうって事にしたんですよ」
宮空先生がそう言うと、康太が紙を取り出す。
「これ卒業証書、俺が作ったんだぜ」
「文章はお父さんとお母さんに聞いていたじゃない」
「書いたのは俺なの、じゃあ読むぜ」
康太が少し緊張しながら、卒業証書を読みあげる。
「卒業生、大木博一殿。あなたは〇□交番において、私達住民の為に昼夜を問わず働き、頑張ってくれました。その頑張りが認められあなたは交番から卒業することができました。おめでとうございます。宮田康太」
康太が読み終えると俺は頭を下げて卒業証書を受け取る。
「続いて、卒業生代表挨拶」
「って俺しかいないじゃん、原稿は?」
「ねえよ、頑張って自分の言葉で言いなよ」
「はーー、卒業生挨拶。私が初めてこちらの交番に勤めたのは3年前でした。その時は右も左も分からず、みなさんにご迷惑をおかけしました。そんな私も今日、ここを巣立っていきます。まだ1人前とはいえませんが、皆さんのご期待に応えられる、そんな警察官になりたいと思います。これをもって卒業の挨拶とさせていただきます。卒業生代表大木博一」
俺が卒業の挨拶を終えて頭を下げると瑠美ちゃんが俺に泣きつく。
「時々は遊びに来てよ、絶対だよ」
「ああ、瑠美ちゃん」
「あの、気になったら連絡してください、私もしますから……」
「宮空先生、はい」
康太は俺に背中を見せながら、俺に声をかける。
「頑張れよ、刑事さん」
「刑事……ああ!」
最後に班長に挨拶する。
「それじゃあ、班長お世話になりました」
「頑張れ、それからもしダメだったら、またここで鍛え直してやる」
「はい!」
俺はこの日、交番勤務を卒業した。そして刑事1年生として新たなスタートを切ることとした。
おわり
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