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いつものカフェが、 時間と一緒にいる人が変わるだけで、 雰囲気も変わって見えるような気がした。 「芹沢さん、何がオススメて言うてはったかな」 呟く優に、遥が答えた。 「ラザニアじゃないですか?」 「そうそう、ラザニアや。  ほな、僕、ラザニアにしよかな」 「じゃ、私も」 日の入がすっかり遅くなった海は、 まだ夕暮れを映し出していた。 「すみません、  なかやかお休みが合わせられなくて」 「ええねん、ええねん、  僕も週末でも、展示会やら  ただの残業やらも、ようしてるしな」 優の柔らかい関西弁と、 人懐こい笑顔と優しい物腰に、 緊張がほどけていくようだった。 一年で一番昼が長い時期の夕暮れも やっと生暖かい、しかし柔らかい夜と なっていた。 「次、いつ会えるかな?」 「週末ですよね…  今月は難しいです、勤務が入ってて」 「ほな…、来月は?」 「まだシフトが出てないんです。  逆に、八重樫さんは、いつがいいとかありますか?」 「3連休、あるやん?  初日に僕の住む市で花火あんねやんか。  良かったらって思ってんけど、  あ、でも3連休とか、仕事忙しいかな?」 「花火なら早番でも行けますし、  大丈夫と思います。  リクエスト出しておきます」 久々に楽しみな約束に 胸が躍るような遥だった。
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