魔術師オーエンを探して

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「魔術師オーエンをお探しでしたね。お知り合いなんですか?」  旅人はほぅと満足の溜息を吐いてから答えた。 「ええ、まあ。知人の知り合いといったところでしょうか。それほど親しい仲ではありません」 「それなのに、こんな森の奥地まで訪ねていらしたんですか?」  青年は意外そうに目を丸くした。  見れば見るほど、印象的な瞳だ。黄色の虹彩の中にはっきりと黒い亀裂が走っており、暖炉の火を受けて黄金のように輝いている。旅人は彼の瞳に魅せられた。 「どうしてまた、そんな」 「実は、この森の周辺で化け猫が出るようになったそうなんです。付近の村ではもう何人も喰われています」 「化け猫? それは恐ろしい……」 「ご存知ないですか?」  今度は旅人が眉を顰める番だった。青年はけろりとして答える。 「知りませんでした。僕はほとんど森の奥から出ませんからねぇ」 「そうですか。では、お出掛けになる時は十分にご注意くださいね」 「ありがとうございます。そうします」  つまり、と青年が話を引き継いだ。 「その化け猫を退治するために、オーエンを探しているんですか?」 「そういう訳です。しかし……アテが外れてしまいました」  旅人はもう一口ミルクを味わってから、話題を変えた。 「それでは、〈秘宝〉の行方もご存知でない?」 「〈秘宝〉?」 「はい。オーエン様がお護りになっていた〈秘宝〉です。滔々と湧き出る魔力を湛え、不死を司ると言われる伝説の〈秘宝〉――」 「うーん……やっぱり僕は知らないみたいです」 「そうですか……」  旅人は残念そうに肩を落とした。
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