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感動を正確に表現するのは難しい
「まぁ!あなたがヴィンセント殿下にしつこく付き纏っている公爵令嬢ですのね?やっとお顔を拝見できましたわ。あなたが引き篭もりをしながらいつまでも殿下に付き纏うせいでとても大変でしたのよ?それにしても、やっと学園にこられたと思ったらそんなに男性を侍らせてやってくるなんて少々下品ではありませんこと?ふふっ、そこの男性方も女性の趣味が悪いですこと。それとも騙されていらっしゃるのかしら?その公爵令嬢は男性を振り回すのが得意ですのよ。ご自分の義弟も騙して懐柔し、さらにはさんざん殿下を振り回していらっしゃるのよ。やはり噂通りの悪女ですのね」
あぁ、聖女だ。と、思った。ループの記憶と、幼い頃に無理矢理探し出した少女の姿の記憶。全てが重なっていった。
ヴィンセント殿下の右腕に胸を押し付けるようにべったりと張り付いたその令嬢が離れること無くにっこりと微笑む。その瞬間、まるでこの場だけ違う空間かのように空気がざわめいていた。やはり、これぞまさに聖女の所業なのだ。
ふわりと揺れる桃色の長い髪を靡かせ、まるで子犬のような庇護欲を唆られるだろう顔をしたひとりの少女。その瞳は桃色でキラキラと輝いている。なによりも親密な関係を伺わせるかのように殿下に密着している様子はどうみても恋人同士だった。そう、とても親密に見えたのだ。
「あ……ヴィンセント殿下……。そ、その人は……」
私は震えるのを必死に抑えて声を絞り出したがダメだった。これ以上は言葉が出てきそうにない……。どうしよう、私ーーーー。
「……あの人間が王子とやらですよね?賢者様はどうなさったのでしょう?……あれが賢者様との婚約を嫌がっている愚か者ーーーー殺していいですか?」
「え、まさかショック受けてるとか?いや、まさか。……へぇ、エターナよりあんな女が好みなんだ。ーーーー趣味悪いな。ころ……いや、まだ殺しちゃダメだろうからとりあえずボコっとこう」
「ふむふむ、あれが王子なら張り付いてるのはやっぱり聖女……なるほど。確かにテンプレヒロインっぼいけど……ーーーーあの聖女おっぱい大きいな?まさかそれで?よし、おっぱいに固執する王子なら殺してもいいと思うんだよね。おっぱい星人は撲滅しないと」
またもや後ろでヒソヒソなにか言っているようだが、私はもはやそんなのに構っている場合ではなかった。(ところどころ不穏な台詞が聞こえるが、気のせいだと思いたい)だって、だって私はーーーー。
「それだけラブラブだってことはぁ!!やっぱり#今回の__・・・__#聖女が選んだのはヴィンセント殿下だってことでいいんですよね?!今度こそ本当に殿下が選ばれたって事でいいんですよねぇ?!あぁ、さすがは殿下!あんなに私との婚約を頑なに拒んでたのは、自分の力で運命を切り開く確信があったからなんですね?!まさか、ちょっと旅に出ている間にこんなにも素敵な進展をしているなんて予想外過ぎて途中まで呼吸するのを忘れてました!!これまで生きててよかったですぅ!」
私は感動しすぎて興奮気味に気持ちを捲し立てるように一気に口にしてしまった。
だってしょうがないじゃないか。あれだけ何度も死んでループしながら繰り返した世界なのだ。その中でヴィンセント殿下が幸せになる世界だけを希望にしてこれまでやってきたのだ。
まさか殿下自身が私との婚約というテンプレを壊して真っ先に聖女とラブラブになっているだなんて……ループ世界も含めて、出会ってから初めて見直したわ!!
感動やらなんやらを含めて、ちょっと興奮していた私だった。
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