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すべてほ殿下のためなんです!
そして5年後。
「ヴィンセント殿下ぁ~っ!もうタイムリミットが迫ってます!早く私と婚約してくださいってば!」
15歳になった私と殿下はループ前と同じく学園に入学している。しかしひとつ違うことと言えば、未だに殿下が私と婚約してくれないということだ。
「婚約したって、どうせ後から婚約破棄しろって言うんだろ」
「当たり前じゃないですか!それが殿下の明るい未来の為には必要なことなんですから!」
ジト目で私を睨むヴィンセント殿下にばいんっ!と胸を張って答える。刮目せよ!15歳にしてこの悪役令嬢らしいナイスバディを!完璧な悪役令嬢は見た目も完璧でないとね!私はちゃんと宣言通りボンキュッボンのワガママボディに成長しているのだ。
すると殿下は私から目を背け、口をへの字に曲げる。なんでそんなに嫌そうにするかなー。
「む、胸を強調するな!はしたな……「ヴィンセント殿下!」なんだーーーー」
毎度顔を合わせる度に同じ言い合いをしている私と殿下の間に、ずぃっとその身を捻り込んだ人影がギロリとヴィンセント殿下を睨んだ。
「義姉上を困らせるのはやめてください」
少し赤みがかった茶髪は癖っ毛でふわふわと柔らかそうだし、アーモンド色をした瞳はキリッと切れ長。なかなかの美少年が私を背に庇うように殿下の前に立ち憚る。
はい、何を隠そう(隠してないが)この美少年こそが私の義弟のアレフである。(調教済み)
「困らされてるのはこっちだ!」
「そんなに義姉上と婚約するのが嫌なんですか?!」
「んなっ……?!」
「こんなに美しくて聡明で優しい完璧な義姉上に何の不満があると言うんです!」
「いや、だから!そのお前の姉が、婚約した後に婚約破棄を求めてくるから……」
「義姉上がそう望んでいるんですから、婚約して婚約破棄したらいいじゃないですか!どうせ未来の殿下は聖女と浮気するんでしょう?!
婚約破棄したら、その後に僕が義姉上をお嫁さんにもらうから大丈夫です!」
殿下と可愛い弟(調教済み)がなにやら言い争っている。アレフを養子に迎えてからというもの、私は調教にすこぶる力を入れた。
まずは姉弟仲を良くしようとあれやこれやと躍起になり、その結果……アレフは義姉である私の事が大好きになったのだ。幼さの残るアレフが「ぼく、大きくなったらねーさまと結婚する!」と言ってきた時はあまりの可愛さの思わず抱き締めてしまったくらいである。あぁ、可愛い。
「もうアレフったら、いつまでもお姉ちゃんっ子で困ったものね」
そう、調教のかいもありアレフはお姉ちゃん大好きスーパーシスコンに育ったのだ。少々やり過ぎた感は否めないが、ともかくこれでアレフが殿下とヒロインの仲を邪魔することはないだろう。なにせアレフにはずっと私の目的を洗脳まがいのノリで教え込んできたからね!
「おい!ニマニマしてないでどうにかしろ!だいたいなんでお前の弟が教室にいるんだ?!」
「それは義姉上の忘れ物を届けにきたからです!「忘れ物?」はい!!」
そう言ってアレフは私に向かってそっと1枚の紙を差し出した。
「殿下を騙してサインをさせるだけの状態の偽造した婚約届けの書類です。テーブルの下に落ちてました」
「あら、うっかり」
「誰が騙されるかぁぁぁぁぁ!!」
こうしてせっかく準備した書類(偽造)はヴィンセント殿下の手によってビリビリに破られてしまったのだった。ちっ。
このままではヴィンセント殿下を幸せに出来ないではないかぁ!
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