やるならやらねば!ならばやる!

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やるならやらねば!ならばやる!

 その日、母なる海はおおいに荒れていた。そして、その荒れ狂う海にひとりの少女が立ち向かっていたのだった。 「伝説の怪魚……とったどーーーー!!」 ざっぱーーーーん!!  私は長い戦いの末にやっと釣り上げた怪魚にトドメをさして、拳を天高く掲げたのであった。  うーん、怪魚って美味しいのかな?やっぱり巨大魚だから大味かしら。  さすがループ世界で過去に私を丸飲みした怪魚なだけあってその大きさはかなりのものだ。とりあえず魔法を使って怪魚を三枚おろしにし、色々な料理の材料に使ってみた。いくら怪魚とはいえ命を奪った以上はちゃんと弔うのが勝者のつとめである。 「塩焼き、煮付け……そのまま刺し身はちょっとクセがありそうだからスパイスに漬け込んで香草焼きとか……あ、スープの具にしてもいいかも!」  味見してみると大味どころかとても美味しかったので、大量に料理を作り平民の皆さんに振る舞うことにした。この国の平民はわりと豊かだが、それでも貧困層は存在する。孤児院なんかはまさにそれだ。ヴィンセント殿下が聖女と結ばれて国王になったあかつきにはこの問題もきっと解決してくれるだろう。だって愛しの聖女が元平民だからね! 「ありがとうございます、#エナ__・・__#さん。子供たちもとても喜んでいます。まさか、冒険者の方があの怪魚を釣り上げて下さるなんて……これで安心して子供たちも魚捕りができますわ」 「ありがとう、おねぇさん!」 「ごはん、美味しかった!おねぇちゃんありがとう!」  孤児院のシスターや子供たちが次々に私を取り囲む。子供たちは質素な服装をしているがかわいい笑顔で元気いっぱいだ。これはシスターたちがちゃんと愛情を込めて子供たちをお世話してくれている証拠だろう。 「いえいえ、旅の途中で#たまたま__・・・・__#怪魚を釣っちゃっただけなので一緒に食べてくれて私も助かりました。それに新米冒険者はなかなか宿屋にも泊めてもらえないんで困ってたから今夜の宿泊場所を提供してもらえて助かりましたし……。  いやぁ~、まさかたまたま釣れた怪魚がこの辺のヌシとして居着いちゃったせいで魚捕りが出来なかったなんて驚きですね!」  今までのループ世界でも平民の貧困層は気になっていたのだ。だが、何回目かのループの時にも孤児院に寄付をした事があったのだが、その時の聖女が「傲慢な貴族の点数稼ぎだ」と非難してきて一騒動起きた事は記憶に新しい(私のみだが)。確か、元平民の聖女に対する盛大な嫌がらせだとかなんとか言われたんだっけ。財力の差を見せつけて平民を見下している悪女……だったかな?そう、つまり……“公爵令嬢”として何かをすると糾弾されるのだ。まぁ、あのときの私は実にいい仕事をしたと自負しているが!  あぁ、まったく。これが婚約してなおかつ殿下が聖女と出会ってる状態ならジャンジャン名前を使って寄付でもなんでもするんだけど、今は聖女どころか婚約すら出来ていない。“聖女に嫌がらせをする酷い悪女”のレッテルを貼り付けてもらえないのでは公爵令嬢の名前を使う意味がないのだ。まったく、殿下がとっとと婚約してくれてればなぁ!(愚痴)……とはいえ、悪女に利用された孤児院として同情を含んでいたとしても微妙な悪名を轟かせたのは本当に申し訳無かったと思ったのだ。  だから私は“旅をしている訳あり冒険者”として孤児院を回ることにした。釣った魚(怪魚)をおすそ分けしたり、こっそり魔法を使って土を開拓したり、畑を耕してみたり、地下水を掘り当てて井戸を作ってみたり、などなど……。その代わりに宿泊場所を提供してもらったり一緒にご飯を食べさせてもらったりしている。直接寄付をしている訳ではないからこれなら平民を見下していることにはならないだろう。  ふふふ、これぞ完璧な擬態!まさかこんな訳ありっぽい雰囲気の冒険者が公爵令嬢とはおもうまいて! 「わぁぁぁ、エナおねぇちゃんが耕してくれた畑からもう野菜ができたよ!トマトってこんなにすぐ収穫出来るんだぁ!」 「この井戸のお水を飲んだら風邪が治ったヨ!」 「エナおねぇちゃん直伝の罠を使ったら魚どころかウサギやイノシシも捕まえられたよ~!」  うむ、これでこの孤児院の食料問題は解決だね☆私の死の要因を排除しながら気になっていた孤児院をこっそり手助けできる……。やっぱり前のループ世界の時は批判されながらの寄付は孤児院も困ってたみたいだったからこっちの方が断然やりやすい!だって一度批判されると寄付もしにくいんだよ~。この方法なら後に最悪の悪役令嬢として名を轟かせても孤児院に迷惑はかかるまい。  こうして私は、自分の完璧な作戦に笑みをこぼしていたのだが……。 「エナおねぇちゃんと出会ってからご飯も美味しいし、みんな健康になったよね。今、すっごく幸せだよ!」 「おねぇちゃんって優しくて綺麗だし……まるで天使様みたい」 「ううん……エナおねぇちゃんはきっと聖女様なんだよ!」  まさか、孤児院の子供たちにこんな事を言われているなんてミジンコ程に思っていなかった。
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