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「会ったことがあるのかぁー」 聞きたかった事と違い、オウム返しして誤魔化す。 「俺もあったことあるよ」 沈黙に飽きたのか、純は急に会話に乗って来た。 「たっちゃんってどんな人?」 沈黙を破って口下手そうな純がそう言うからには『たっちゃん』には何か惹きつけるものがある気がして聞いてみた。 ただナミさんとののろけ話は聞きたくないが…。 「いい人だよ」 まっちゃんにしてみればどんな人でも悪くは言わないに違いないから聞き流した。 純の方の答えを待ったが、すでにテレビの方に気が行ってるようで話には乗ってこなかった。 「たっちゃんは長渕が好きなんだよ」 『長渕剛が好き』と言うだけで何故かその人となりが分かるような気がするから不思議だ。 「そんなのひどいよ!」泣き声と共に部屋に大きな音を立てて入っていった。 純はこういったことに馴れているのか後からナミさんが入った部屋に入って行った。 僕はまっちゃんの顔を見たが、まっちゃんは一瞬だけ心配そうな顔をしただけですぐに取り直し、こちらにニコニコしてみせた。 「今日は帰った方がいいかな」 僕は普段し慣れてない腕時計を見て言う。 そうは言うもののホントはナミさんが気になって仕方なかったけど。 すぐさま純が「今日はまだ帰らないでって、ナミさんが言ってる」と言う。 まっちゃんは「部屋で音楽の編集してるから、何かあったら呼んでね」とナミさんにも聞こえるように言って静かに帰っていった。 「誰もいなくなっちゃうと寂しいし、俺と二人きりも嫌みたい。だから頼む!」 純は困ったようにこちらをみて手を合わせた。 僕は嬉しいような嬉しくないようなで戸惑ったけど 「そっか、しょうがないなぁ」 『どうしたものか…』とテレビもうわの空で考えた。
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