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* * * *  目を覚ました時に一番最初に目に飛び込んできたのは、心配そうな顔をした周吾だった。 「周吾くん……」 「大丈夫? 那津さん、意識失っちゃって病院に運ばれたんだ。検査の結果も異常はないから、目が覚めたら帰っていいらしいよ」  周吾は安心したように表情を緩ませると、那津の髪を撫でていく。 「一応言っておくと、二人のやり取りを動画で撮っていた人がいて、佐藤さんは警察から事情を聞かれてる。彼女がどうなるかはわからないけど、誰がどう見たって犯罪だよ」 「うん……」 「でも……那津さんが無事で良かった……」 「うん、ありがとう……」  その時、ドアから中を覗く男性の姿が那津の視界に入る。 「おっ、目が覚めたんだ」 「殿山さん」  すると殿山は嬉しそうに那津が寝ているベッドに近寄ってきた。 「どうも〜。周吾の大先輩の殿山で〜す! 体調はどうですか?」 「あっ、はい、大丈夫そうです」 「ちなみに那津さんが着てた服が濡れちゃったから、殿山さんの奥さんが貸してくれたんだ」 「そうなんですか⁈ すみません、ありがとうございます!」 「いえいえ〜。あっ、周吾も今日は帰っていいぞ」 「えっ、いいんですか? やった」  那津が起き上がろうとするのを、周吾が背中に手を回して支える。それを見ていた殿山が、鼻を押さえながら壁に向かって倒れ込んだ。 「周吾くん、恋の炎は消防士でも鎮火不可ですよ」 「うるさいから出てってください」  楽しそうに部屋を出た殿山が完全にいなくなったのを確認し、周吾は那津の方に向き直る。 「じゃあホテルまで送るよ」 「あっ……ち、違うの……。実はもうチェックアウトして……荷物は周吾くんの部屋にある……」 「……それ本当?」  顔を真っ赤にしている周吾の胸に、那津も恥ずかしそうに顔を埋めた。 「本当。だから……周吾くんの部屋に一緒に帰っていい?」 「もちろん」  周吾の腕に抱きしめられ、那津はこの上ない安心感と幸福感を感じていた。
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