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裏切られた代償は己の命
「あははは、騙されて死ぬ気分はどうだ?」
俺はダンジョンの中でパーティーを組んだ仲間に裏切られ、命を落とす間際にいた。
背中から突き刺さった剣が、心臓を通って胸から突き出ていた。
口から血反吐を吐き、足から力が抜けて倒れて地面に鮮血が広がる。
「恨むなら無知な己を恨みな。ダンジョンの中では自分以外を信用しちゃ駄目なのさ」
俺を裏切り、剣を刺した男は他の仲間達と一緒に俺の荷物を物色していた。
「か、返せ・・・」
「馬鹿か? 死んだ奴の遺品は仲間が回収しなきゃいけないんだよ」
始めから俺の所持品目当てだった訳か。情けない、何故気づけなかったのだろうか。
目が霞み、段々鼓動が小さくなっていく。意識が遠のき、俺はダンジョンで命を落とした。
ーーー筈だったが、気が付くと見覚えの有る天井と暖かなベッドの上だった。
「何が起きたんだ?」
「お早うございます、坊っちゃま。旅の支度は整っております」
声の主を探すと、扉の前にメイドが居た。我が家の雇われ家臣。俺は悪い夢でも見ていたのか?
ふと、首に下げていたアクセサリーが気になり胸元から取り出す。
すると、其処にはひび割れて輝きを失った、宝石が嵌め込まれた家宝が有った。
そう言えば、ご先祖様は偉大な魔術師で時を操れたと伝承に残されていた。五歳の誕生祝いで貰い、肌身離さず着けていた。
俺は未来で命を落としたが、家宝の力で過去に戻れたと考えれば辻褄が合う。
「父上と母上は何処に居られる?」
「大広間でおくつろぎ中です」
「支度を済ませたら旅に出る。玄関に向かうと伝えてくれ」
「畏まりました」
部屋からメイドが出ていったので、身支度をする。持っていくものは以前と変わらない。いや、少し多めに持っていこう。
売れば価値の有る、自分にはもう要らない物を幾つか鞄に入れる。路銀に困る事はこれで無くなる。
それに、今度は信頼の置ける仲間を始めから用意して居れば、ダンジョンで命を落とす事も無い筈だ。
俺は奴隷を連れ歩く事に懐疑的だった。だが、裏切らない相手を探すなら主従関係がはっきりしている奴隷は、この上無く最適と考え直す。
両親にも一人旅の心配を和らがせられる。家臣を連れていかせようとしていたが、断った自分は愚かだった。
「俺はもう他人を絶対に信用しない。信じられるのは主従関係のある者だけだ」
こうして過去をやり直せた俺は、屋敷から旅立ち街に着いて早々、物を売って金を用意して奴隷商の館に足を運んだ。
戦闘奴隷は絶対必要として、性奴隷を確保するかどうかは残金次第か。
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