侍女A改め王様です

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侍女A改め王様です

侍女A改め王様です。 仕事、とはいえどそれは侍女の仕事では無い。 私の個人的かつ個人的な仕事である。 私個人としては、二足草鞋もキツくなってきたので、個人的な仕事を今すぐ辞職したい所なのだが、それは兄が許してくれないだろう。 そんな事を考えながら歩いて、私は侍女が住まうマリーナ侯爵家の離れの邸宅にある自室に戻る。 周りに人が居ない事を確認したその後「ゲート」を開いた。 これは思い描いた行きたい場所に行けると言う高度かつ高度かつ高度な魔術で、何か伝説の〜とかって言われているが私は気合いで開発した。 まだ未完成の為、このゲート私以外が開いて入ろうとした場合入った瞬間細切れになって死ぬだろう。 そんなゲート、転生チートで何か出来ちゃいましたー!と言う私は結構ウザい気がする。 かと言って、そんな私力無いのに〜ってやってんのも何か嫌なのでもうはっちゃけちゃおう。 私強ーい! 最強?それとも天才? 慢心してると痛い目遭うぞ? へっ、何とかなるさー! イェーイ! ……………。すみません、前世隠キャの隠れオタが調子乗りました。 謙虚、堅実を守って生きます。 はい。 と、まぁそれは置いといて。このゲートを潜れば行きたい場所に行けるわけさ!だから、移動が簡単なわけだ。 それでは早速、呪文を唱えるとしよう。 「どこでもドア!”アーテル国”の王宮、302号室へ連れてって!」 ネーミングセンスも呪文のセンスも無いって? そんな事どーでも良いんだ。 大体、どこでもドアは前世の国民的マスコット青ダヌキくんが使っていた便利グッズである。 大事なのは実用度! まぁ、このドア実用度も低いけど。 すると、暗黒色のゲート兼どこでもドアは怪しい紫紺色の光を放ち大きくなって行く。 そこに飲み込まれる様にして、私はゲートを潜った。 眩しくもどこまでも仄暗い光に包まれたと思ったら、次の瞬間侍女部屋ではなく豪奢な部屋に立っていた。 此処も私の部屋である。 こんな無駄にだだっ広い部屋要らないんだがな。 大体侍女部屋一室分のトイレって何だ? 費用の無駄! だが、まぁ仕方ないだろう。 だって此処は私の自室であり、”アーテル国国王フルクトゥウスの自室”なのであるから。 そう、私は帝国の王でありマリーナ家の侍女なのだ! 何でこうなったか〜と言うと長くなる。 そうだな、私個人やアーテル国の話をする前にこの大陸の話をしよう。 スペクルム大陸は元々紛争だらけだった。もう年中戦争していたと言っていい。 その戦争の理由としては、他種族との相性による交戦。 私の主様が住まうフォリウム国は人族が主に住んでいる。後は、花や葉などに住まう精霊かな?だからかあんなに庭園が豪奢なのだ。高貴なる精霊が集う場所として。 他にも獣人、ドライアド、ヴァンパイア、マーメイド、オーガ、エルフ、ドワーフ、パピィ、ゴブリン、ドラゴニュート、、、数を挙げたらキリがない。 そんな種族達は他種族を危険視し、そして憎み合っていた。 まあ、大陸の端にあった国や、神聖共和国〜とかって国とかは共存又は徹底的なる隔離とルール決めにより平和地区とかって呼ばれていた国もあったそうだけども。 大体のこの世界の住民は戦争をしていた。 そんな時に、異世界から救世主がやってくる。 その救世主は、他国に勝る超巨大国家の成立を成し遂げる。それによりその巨大国家が他国を監視、そして戦争を止めさせる盟約を戦力により結ばせると言うーーーつまり、戦争したらその国家に攻め入って圧倒的戦力による制圧をし属国にする。的なのを繰り返し超巨大国家はどんどん大きくなっていった。 もはや、救世主超えた魔王である。 最終的には領土が大陸の三分の一を占める国家になったし。 そんな国家に歯向かう気も起きなくなってそして、絶え間無く続いていた戦争は終わりを迎えた。 世界を物理で救った救世主様は、その力を求めて来たあらゆる種族の者達といわゆるハーレムを築き。 生まれてきた子供達の分だけ国を分け与えた。 そして12人の子供が生まれ、12の国が生まれた。 円型の国土を中心にもっと小さい円を描き囲む様にして11の国を作り。 真ん中の初めに出来た国長男に。そして、他の兄妹の”面倒”を見る事を約束させ住まわせる。 そして北から順に兄姉を住まわせ南の方に妹弟を住まわせた。 その後の救世主様と、ハーレムに属する女性らは旅をしに消えた。 どこへ行ったのかも何をしているかも分からないが、私個人としてはどっかの大陸の国でも救っているのではないかな〜と思う。 物理で。 話を戻すが、巨大国家を分けたのだとしても、一個一個の国はとてつもなく広大で周りに占める近隣国等と比べると桁違いに大きい。 まぁ、そしてその超巨大国家をアーテル国含む10の国を指す。 何で10なのかと言われれば、2人ぐらい消されたからだよ長男に。としか言いようがない。 そして私も、救世主様が父親なもんなので。 生まれたばかりの頃から国を与えられ管理を任された。 因みに私は11人目なので限りなく南に近い南西の地区から北西ぐらいまでを管理している。 初めの頃は父の元補佐官だとか言う人が手伝ってくれたが六歳になったら 「フルクトゥウス様は大変ご優秀なのでもう私が手伝う必要は無いと判断させて頂きました。これからはお一人で頑張ってください。」 っていって六歳迎えたばっかりの幼児に国一つ置いて消えやがった。 生まれたばかりの頃から転生前の記憶があったので、確かに優秀だったかも知れないがそれは無いだろって毎日叫んでいた記憶が残っている。 そして、国の管理とかどうでもいいと思っていた私はそれをサボりにサボっていが…….9年前ぐらいに行われたフォリウム国のパーティーで推しを見つけた事により覚醒する。 兄妹は殺伐としているし、安らげる場所はどこにも無いし、異世界行って早々精神が擦り切れそうだった私はそこで癒しを見つけた。 そして、彼女を限りなく近くで崇められる仕事に付きたくて行動を開始した。 サボっていた国政だの何だのを頑張って始める。 人材をあらゆる場所から集い教育を施す。 人材は私自ら、又は見つけてきた鑑定士にスカウトを頼みやってもらう。 国家予算や、元々やっていた商業の落ち込み度、立て直し諸々。 後は王が無能なのを良いことに好き勝手やっていた奴らを全て潰し、異世界の知識とこの世界に元々あった知識を集結させての大改革。 何とこの体、前世の私と違い一眼見れば全ての事が覚えられるなどと凄いハイスペックな体なのだ。だからか馬車馬の如く働いても疲れないし倒れない。 そんなこんなで頑張って頑張ったら…..いつの間にか国家には少し余裕ができ、平均寿命と生活基準をかなりの所まで引き上げることができた。 そして、好きなことを出来る状態になったので私は八歳の時長男に交渉を仕掛けに行く。 私が好きな事をする為にはもっと低い身分が必要なので、王位と私の持っている国土の所有権を剥奪し追放してくれと。 前例としては消された兄妹の一人がそうなのであるから、私は自身を追放する事によるメリットを挙げた。 そして追放してもらう代わりに何億万と言う金を支払う事等と言ったのだが掛け合って貰えず……. 後はヤケクソで追放して貰えなかったら長男が管理している都市に攻め入るとか言った気がしなくもないが、気の所為だろう。 いや〜中々に危ない橋を渡ったものである。 そしてしつこく頼んだ結果、兄王は何故そこまで追放されたいのかを聞いてきた。 だからこう言ったのである、私は。 「友が欲しいから。だから、我の身分を知らない物達がいる他国に行って探したい。」 性格には友人に近い主人だけども。細かい事は気にしない。 だがあの兄王は、ずっと一人で国政を担っている私が子供らしく友人が欲しかったのか〜とは納得して貰えず其れを踏まえた上での賄賂を請求しやがった。 曰く、お前が他国で働いたり友人関係を築く手伝いをする代わりにお前は王としての役割とただのフルクティクルスとしての役割両立して果たせと。 曰く、手数料として1万ルゴラ….日本円で一億円払えと。 その条件を渋々飲み、どこでもドア〜と言うワープができるゲートを開発した事により私は他国に身分を隠して働く事が出来る様になったと。 中々に、大変な日々だった。 そして私はこうやって夜や、たまに休暇を貰い王として働きにくる。 手首にかけている腕輪を外す。カチッと音がして私の姿はこげ茶の目と髪、少し白い肌の色の平凡な顔立ちの人間の少女から漆黒の髪に赤と紫が混じった様な目、小麦色と褐色の中間ぐらいの色の肌を持つ少女?なのか?に変わっていく。 耳がとんがっているのを見て分かる通り種族はエルフ。 性格にはダークハイエルフだそうだ。 緩く団子にしていた髪は、肩の所で切り添えられ服も侍従服から白のシャツに黒のズボン、赤いメッシュが入った服に変わったのを私は備え付けの鏡で確認した。 ……………。 救世主様と顔も見た事がない私の母親は多分見た目は良かったのだろう。 一応美少女っぽい感じの顔だ。 この腕輪は、兄王がくれた物だ。 思い描いたアバターに姿を変身出来ると言う物で使い勝手が良い。 これに関しては感謝している。 腕輪を今度は魔力を流さずに嵌めて部屋を出る。 長いカーペットの敷かれた廊下を歩き事務室に入っていく。 もう配下って言うか部下達は揃っていた。 そして仕事と言う悪魔が私に襲いかかってくる。 「陛下、おはよう御座います。先日に渡しました研究許可の書類を頂いても….」 「この前の議題でも出ていたグラパリムの栽培についての研究資料を読んだが、品種改良をこれ以上進めると市場の相場が狂うのでは無いか?砂漠地方での給水や栄養摂取、栽培には限りなく有効に使えるが、グラパリムは他地域でも栽培している。今の改良を続けると砂漠地域のみに特化した物が出来上がるだろう。地域により収穫量が変わる不安定な状態のままでは許可が出せぬ。しばし待て。 また、合同研究の任意書は許可を出した。農学部と地質部による研究結果、楽しみにしているぞ。」 「商業ギルドの新設……」 「商業ギルドに関しては財務大臣に一任した筈だが、覚えておらんのか?無能。」 「はっ、申し訳ありません」 「水路建築についての考案の許可証、、」 「予算と見積もりがよれくらいになりましたが陛下どうなさいますか?」 「構わぬ、進めろ。」 「報告があります、陛下。部署が開発中の新商品についての売高が….」 「洪水による被害減と、砂漠地方の水不足の解決方法として水路の建築の許可を」 「資料を持ってこい」 時は進み、その7時間後。 ………………..。 視察、許可、資料、読んだ、考案、議題、予算、、、、、、 やっと、一日が、終わった………. しぬぅ、推し、推しを見ないと死ぬぅ、、、 干からびて干物の様になった私はおよそ30本目のポーションと言う名の栄養ドリンク剤を飲み干す。 最後に、締めの言葉を言えば今日はマイホームに戻って寝れる。 あと、アリーエ様に会ってからか… 「皆、今日も大義であった。後は頼んだぞ。それではな。」 後ろで、「王、もう自室に帰られるのですか!?まだあの書類の許可を取っていないというのに…..」 とか、「寝るの早すぎじゃねえのか、あの暴君」 とかって聞こえるけど聞こえなーい。 エルフは耳がいいので余計な事聞いちゃうけど、不敬罪にはしないといてあげるから仕事してくれ。 給料はいいだろ、此処。 議題を終わらせて、ヘロヘロな体を引きずる様にして自室に戻る。 腕輪を起動してフルクトゥウスからフルクティクルスの姿へと変わる。 どこでもドアを開き、アーテル帝国の首都にある市場の路地裏にワープした。 今日は適当にパンでも買って食べて帰ろう。 市場を歩いていると、人々の笑顔に目が行く。 7年くらい前は絶対に無かった光景。 あの頃は国家が貧しくて此処も貧民街だった。 路地裏に何てとんでもないが危険すぎてワープ出来ない。 本当によく頑張ったな、私、、と思いつつ美味しそうなパン屋を見つける。 よし、今日は此処にしよう。 白い屋台が立ち並ぶ中、ステッキ状のパンが売っている店に入る。 「すみません、これとこれください。」 「あいよ、3アンルだ。」 日本円にして300円か、安いな。 パンを売っているおじさんに硬貨を渡しパンを受け取る。 白いあぶらとり紙に包まれたパンは湯気が立ってて美味しそうだ。 って紙!? 高級品では….? 「これ、もしかして紙ですか?」 「あぁ、そうだよ。最近景気が良くてねぇ。奮発したんだ。王様のお陰かな。あの方が王位についてから、どんどん生活が良くなっている。」 「そうなんですか……..」 へーと思いながら、少しニマニマしてしまう。 ちょっぴり嬉しいのだ、これでも。 こう言う話を聞くと頑張ろうと言う気になる。 夜景を見ながら市場を歩く。 オレンジや赤いランタンが煌々と光り、夜道を照らす。 もうそろそろ夜になるのに賑やかで明るい。 あぶらとり紙を少しずらしてパンに被りつく。 ジュワッとした揚げ物ならではの味と仄かな甘み。もっちりとした食感は珍しく小麦以外に何か混ぜて作っているのだろうか。 美味しくてあっという間にパンは無くなってしまう。 お腹が満たされると、何とも言えない満足感が漂い気が抜けた。 その後指についた油を紙の端で少し拭き取り丁寧に折り畳んだ。 「さて、帰るか。」 家に。 あのこじんまりとした部屋に。 帰ったら、アリーエ様の話を聞く約束もしたし。 ご飯も食べたし。 あとは、研究資料と予算表に目を通しておくか。 同僚のレイアの愚痴を聞きながら今日は寝れるぐらい気分がいい気がする。
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