侍女Aは魔術学園に行く

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侍女Aは魔術学園に行く

侍女Aは魔術学園にいく。 馬車に揺られながら窓の外を見る。 わー綺麗な花畑、あそこで寝っ転がりたいなー。 景色を見て気を紛らわそうとしてもやっぱり吐き気は込み上げて行く。 そう、この私、フルクティクルスは絶対絶命な危機にいつもの事ながら追い込まれていた。 世間ではそれを乗り物酔いとかと言うらしいがなにそれ美味しいの? これは乗り物酔いとかって言う生優しいものでは無い、殺しにかかって来ているもっと凶悪な物である。『デス•キャリッジ』とこの馬車は名前を改めた方が良いのでは無いかな? だって、吐くって私今主様の前に座っているんだよ? 憧れの人の前で、ゲロ吐くって死刑に等しく無い? 大体、私一応王様だし。 一国の王が乗り物酔いごときでゲロ吐くのは私のプライドがどうも許してくれないのだ。 それに加えてカダンゴトンとめちゃくちゃ揺れる馬車は正直言って乗り心地最悪。 なんて言うか、尻が死にます。 やっぱり前世の舗装された道路の有り難みをこんな所で感じる。 もう、いっその事馬車と言う馬車をこの世から消し去って車を普及させようか….? 私の権力と財力を使えば、不可能では無いかもしれない。 それか、私のどこでもドアの実用化を早めるか。 でもそれをするとナンが解雇されてしまうか。 くそう、早く学園に着け……… 「クルス、今日は精霊召喚の儀式があるんだ。だから早めに学園に着く様家を出たのだが、この時間帯だと門が閉まってそうだ。どうする?」 主様、今は待って下さい、さっきのガタンで更にダメージがってなんだって? 門が閉まっているっていったか? それはつまり、この馬車のスピードが遅くなり更に馬車に乗る時間が増える事を言っている? イコール死刑宣告。 それだけはダメだ、さあ動け、今世の無駄に高性能な私の脳内単細胞! 働け、働くのだあぁ…… 「では、この丘を抜けたところにある町で少し散歩でもしませんか?あの町は治安が良い事で有名ですし、貴族もお忍びで出歩く事の多い町でもあります。アリフレッド様が出歩いても不自然ではありませんし、息抜きになるので。どうですか?」 私、天才! 息抜き! 最高! よくぞ働いてくれた!脳内単細胞! この数分間で、近隣の治安の良い町を検索、かつ貴族が出歩いても良い町、 かつオシャレで出歩くのが楽しそうな町!! 良くぞ見つけてくれた。 さあ、主様そうしようかと言って下さい。 お願いしますじゃないと死にます、頼みます……. 「では、そうしようかクルス。」 いやったぁぁぁぁあ! あざます!あざます! 今日を私乗り切ったぞ!帰りもあるけど。 ナンに連絡を入れて町中に入った路地裏辺りに馬車を止めてもらう。 私は護衛兼だ。めちゃくちゃ強いよ、転生チートにより。 まぁ、その事を主様含め侯爵家の人達は知らないから帰ったら怒られそうだけど。 よーし。時間を潰すんだ。 馬車が止まり、馬車から躍り出そうとする足を宥めそっと降りる。 白色にピンクや水色などが入った家が立ち並ぶ街中はとてもお洒落で見てても楽しい。 「クルス、この店は何の店なんだろうか…?」 主様が立ち止まったと思い、前を見ると其処には茶色のレンガ壁と、所々に生えているクレマチスの花々が美しい店があった。 ガラス張りのショーウィンドウから見える店内にはアンティークな家具が置いてある。 「此処は、魔術が使えない人用の店ですかね。」 大体の家具には魔石という物が使用されており、それを魔力で起動させる事により色々な家具が使える。 だが、魔力がない者はそれができない。 主様の周りには魔力を持った者しか居ないので物珍しかったのだろう。 「成る程、道理で魔石の気配がしないのか。」 「入ってみます?アリフレッド様?」 「あぁ、少し気になる。」 少し、と言っている割にはソワソワしている主を見つめ、私は店のドアを叩き入ってみる。 「失礼します、、、」 独特な木の匂いが香る部屋。 店主は初老のお爺さんで、親切に家具の解説を主様と私にしてくれた。 聞き慣れない技術に、主様は少し目を輝かせながら店内を周る。 最後に、主様は時計と羽ペンを購入すると店主に礼を言いを出ていった。 私もこっそり出て行く前に大きな買い物をする。 日本円にして何百万円の手動洗濯機。 まさかの手動洗濯機を国で魔石を利用した物に改良出来ないか気になったのと、私の治めている国は、魔力の無い者が多いので此れを一般市民に提供出来ないかを検討したかったからだ。 時計などの技術も素晴らしく店主に時計を作った職人の紹介をこっそり取り付けておく。 勿論日本円にして何百うん万円で。 この店主中々のやり手である。 その他にこの私に色んな物を買い付けさせやがった。 しかもそのかなり重要そうな契約、結んだのは約5分程である。 最後は両者笑顔で握手を交わし、この店主とは色んな意味で長い付き合いになりそうだと思った。 勿論のこと主様は、主様が店内を見て回っていた時にそんな事が行われていた事を知らない。 良い買い物もしたし、息抜きになった。 主様も笑顔だし良き良きと。 まぁ、だからこそあの地獄….馬車に戻りたくない。 主様を色んなところに連れ回した結果、ナンからお叱りを受けた。 解せぬ、主様は楽しそうだったから良いではないか。 ついでにこれは侍女長にも報告されるそうなので帰ったら耳栓を用意しよう。 ちゃんと反省してるのか?とナンに睨まれたので頷いておく。 うんうん、勿論です。反省してますとも。 前回までの私は馬鹿だった。 途中で息抜きをすると言う素晴らしい方法があるんだったら始めからそうすればよかったのだ。 次回から主様を早めに起こして、早めに家を出よう。
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