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旅立ち
三毛猫は苦しそうに呼吸をしているが、明らかにその呼吸は弱く、目も開いていない。
「こんな状態で、よくここまで歩いて来たね‥」
三毛猫に話し掛けるも、勿論ニャーと鳴くこともない。
役所から来てくれた市の職員さんに引き渡すと
「最近猫特有の皮膚病が流行っているみたいで、多分この猫もそうだと思います。人間には移る心配はないですが、もし触ってしまっていたら、念のためよく洗ってください。」
「この子はもう時間の問題ですので、安楽死の処置をします。」
悲しいけれど、素人の私が見ても、この子の命は残りわずかだとわかる。
「よろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそご連絡ありがとうございました。」
三毛猫は役所の車に乗って去って行った。
(助けてあげられなくてごめんね)
そう心の中で呟きながら、ベランダについた血液混じりの液体を水で流し、念のため消毒した。
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