103号室

出逢い

もう16、7年前の出来事だ。

私が実際に体験した、哀しくも不思議なお話。

当時住んでいた3階建てのアパートの近くには川があり、川に掛かる小さな橋を渡ると、大通りに出る道がある。

歩いて数分のスーパーからの帰り道、橋の入り口にランドセルを背負った小学生数名がしゃがみ込んでいた。

横を通り過ぎる際に、しゃがみ込んでいた理由が判明した。

毛並みがバサバサで目には目脂がいっぱい付着した三毛猫が、今にも生き絶えそうな状態で苦しそうに大きく呼吸している。

そんな三毛猫を心配して、子供たちはしゃがみ込んでいたのだ。

私も息子も動物好きではあるが、息子にアレルギーがあり保護するわけにもいかない。

（可哀想に‥）

猫に対して可哀想だという感情を持つものではない、と昔母親に言われたことが頭を過ぎる。

私は後ろ髪引かれる思いで通り過ぎ、家路に着いた。