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シュウとミュウ
「点滴はもう大丈夫なので、あとは目を覚ますの…」
「…ありが…ございま…。」
月菜は話し声が聞こえたような気がして目を覚ました
「ん…」
「月菜?」
月菜が目を覚ましたのは、病院のベッドの上だった
「…おかあ…さん?」
ベッドの横には月菜の父と母がいて
「良かった…本当に良かった…」
と父と母が泣きながら抱き合って喜んでいた
月菜は、"ハッ!"と思い出した
「お母さん!ねぇ、あのネコは?」
母は、ん?という顔をした後に、あぁ!と思い出したように月菜を見た
「貴方が助けた、あのネコちゃんなら…陽菜が病院の庭で見ているわよ」
陽菜は月菜の妹だ
母の言葉を聞くやいなや
月菜はベッドから身体を起こし…
「私…行かなきゃ…」
とベッドから降りようとしたが…
"痛っ"と頭を押さえると
月菜!と両親が背中を支えた
その時、頭に巻かれている包帯に気付いた
「月菜、どこに行くの?貴方頭を打ったかもしれないのよ」
母が月菜に言い聞かせるが…
「行かなきゃ…どうしても行かなきゃ…」
と止める母を振り切って、月菜は中庭にいるネコ…いや…シュウの元へ走った
中庭へ着くと、妹の陽菜がシュウを抱っこしていた
「…お姉ちゃん?」
陽菜が月菜に気付くと
シュウが待ってました!とばかりに、陽菜の腕をすり抜けて、月菜の元へ来た
「…シュウ!」
月菜がシュウを抱きしめようとすると、シュウは月菜をすり抜け、道を誘導するようにゆっくり歩き始めた
「待って!シュウ!」
月菜はシュウの後を追いかけて行くと
やがて、病院からほど近い所にある人気のない廃屋へと着いた
シュウが振り返り中を見ろと言わんばかりに、月菜を促した
月菜が恐る恐る中を覗くと…
「ミュウ!」
そこにはミュウがいた
月菜はシュウ、ミュウと共に自分の世界へ戻ってきたのだ
「良かった…」
とミュウの抱きしめると、シュウも隣へ来て月菜の頬を"ペロッ"と舐めたのと同時に
"助けてくれて、ありがとう"
とシュウの声が聞こえたような気がした
その後、シュウとミュウを連れて月菜は病院へ戻ると
「月菜!どこに行っていたの!」
と母が病院の入り口で叫んでいた
だが、月菜にはそんな事はどうでも良かった
シュウとミュウを助けられた事が嬉しくて、他のことなど頭に無かった
「お母さん!」
戻ってきた月菜が母に
「このネコちゃんたち、家で飼うから!」
と告げた
月菜が後から聞いた話…
月菜があのネコを助けた時、外壁にぶつかって倒れている月菜を見たネコが近くのお店に飛び込んで行って、店員さんを月菜の元まで連れてきたのだとか…
"とても賢いネコちゃんなのね。でも不思議よね…月菜を助けたあと、姿が見えなかったのよ
そしたら、さっきひょこっと戻ってきたの…"
と母が感心していると
"月菜の命の恩人…恩猫なら、もう家族も同然だろ。"
と父も納得したようだった
「良かった!」
と月菜はシュウとミュウを抱きしめた
「名前も決めないといけないな!」
と父が言うと
「名前…決まっているんだ!」
月菜がシュウとミュウを交互に見て
「シュウとミュウ」
と告げたのだった
END
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