二人のその後①

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二人のその後①

ずっと幼馴染みだった 昔は仲良く一緒に遊んだり、お誕生日は互いの家で‥お誕生日パーティをしあったり‥‥ずっとそんな日が続くと思ってた。 だけど、違った。 彼女は中学から受験をし、高校も地元の有名な偏差値の高い高校に通い‥ 俺は平凡な中学に行き、ろくに勉強もしなかったから、地元でもあまり偏差値高くない高校に通っている。 互いに会うことも会話することもなくなり、連絡先を知っているだけの中‥‥‥そう、先日までは思っていたのに‥‥ 「プレゼントありがとうございました。‥Twitter、いつも見てます」 「Twitterでは恥ずかしいからこちらにします。私も大好きです。あなたのことが」 そんなLINEが俺のもとに来るなんて、思いもしなかった。 ーーーー翌日 もちろん、俺は一睡もしていない。出来るわけがなかった 友達とオンラインでマルチプレイをしていて、2時間位遊んだあと、 友達は「ご飯できたみたい」と、一旦抜けた。 あわせて俺も休憩しようと、スマホを見たら‥あのメッセージが通知で来ていた。 目を疑った。何が起きてるのかわからなかった。 何で‥‥?どうして‥‥? そんな気持ちでいっぱいだった。嬉しさはすぐ来ずに混乱していた。 そのせいで、昨日俺は返信できなかった。 ‥‥返信したのは今朝、つい先程だ。 「‥‥話がしたいから、駅前で待ち合わせしよう」 俺が送ったのはその一言。彼女からは既読がつくと「わかった」とだけ来ていた。 そして‥‥‥‥ 「おはよう」 「あ、ああ‥おはよう‥」 彼女は本当に来てくれた。 今まで来てくれなかったの‥‥‥いや、誘ったことはなかった。 だが、誘われたこともなかった。 単なる昔からの知り合い程度にすぎないと思っていたのだが‥まさか来てくれるとは思わず、俺はこのときかなり緊張していた。 「と、とりあえず‥電車乗ろうか」 「そうだね」 緊張する俺といつもどおりの彼女。 二人は揃って、学校に向かう電車に乗り込んだ。 ーーーーガタンガタン 車内の人はほぼいない。 私が行く時間は出勤ラッシュよりだいぶ早いから、いつも人影は少なかった。 でも、今日は私の隣に一人‥いつもとは違う光景があった。 私は委員会活動で、いつも朝早くに学校に行っていた。 そのため、普通の登校時間より早起きしていたのだけど、今日‥そんな時間に彼からLINEがきた。 「話がしたい」 そう書かれていたのを見て、私は二つ返事で頷いたのだった。 「なあ‥‥昨日さ‥‥」 「うん、どうしたの」 彼の口調は何か言いたくなさそうな言葉を言おうとしているように見えた。 私は、そんな彼を見て、胸が痛かった。辛いことが待っているんじゃないかと思っていた。 心の中で次の言葉をもはや祈るような形で、じっと待っていた。 「あの、言葉‥‥冗談だよな?だ、だって、そんな素振り一回もなかったし!‥‥それに、急すぎたし‥」 「私、嘘つきじゃないよ」 私は出来る限り平静を装って、淡々と話した。 いつもどおり‥‥いや、いつも以上にクールな佇まいを、この時の私はしていたかも知れない。 ーーーー彼女は真剣な眼差しで、こちらを少し見つめたあとに口を開いた。 「それとも‥‥嘘のほうがいい?」 一瞬固まりつく空間。俺は彼女の言葉にとても動揺していた。 「えっ⁉‥‥それ‥‥‥て‥‥」 「‥ふふ、冗談。今のは嘘ついちゃった」 弄ばれている。完全に弄ばれていた。 「なんだよ‥驚かさないでくれ」 「ごめんね。嘘なんかじゃないよ」 弄ばれていながらも、彼女と一緒に過ごせるこの時間は夢のようであり、嘘じゃないっていう言葉がどれだけ嬉しかったことかわからなかった。 「‥‥俺も好きなんだ。ずっと前から‥だからTwitterも‥見てたんだ」 俺はとうとう口に出してしまった。 正直、今思えばストーカーと思われてもおかしくないことだっていうのに。 嫌われてもおかしくないことなのに‥流れでつい言ってしまっていた。 「うん、知ってるよ。だからぬいぐるみ買ってくれたんでしょ?」 「‥‥やっぱり、バレてたんだな。‥‥‥嫌いにならないのか?」 俺は本意とは異なる質問をしていた。 嫌いになってほしくない、嫌いになってほしいなんてやつがいるわけがない。 「何で?」 「だって、ストーカーみたいに‥‥」 ギュッ 俺が言葉を続けようとすると、彼女は俺の手を握って言葉を発した。 「ずっと好きだったんだ、本当に。見てくれてて嬉しかったよ。‥‥それにね」 彼女はあのぬいぐるみと同じキャラクターのストラップを見せると、 少し、微笑むような表情を浮かべた。 「君がくれたぬいぐるみだから、嬉しかったんだ」 その時浮かべた彼女の微笑みは、今まで見たどんな景色や、絵画よりも美しかった。 ーーーー駅に到着した。 私達は互いに駅を降り、一緒に歩きだす。 学校の近くになると、朝練に向かう学生などチラホラ見かけるようになった。 私達は違う学校の生徒同士。 そんな二人が一緒に登校してる光景は特殊なため、チラホラとこちらを見てくる人達がいた。 そんなことを気にもせず、二人で歩き進んだ。 「‥‥‥さて、お別れだな」 「うん。そうだね」 一瞬、時間が止まる。 彼は何か言いたげな様子だった。そして、私も言いたい言葉があった。 どっちも沈黙が続く中‥私が口を開こうとしたそのとき、彼が先に声を上げた 「今日!午前授業だから‥‥。終わったら、待ってるな。‥‥一緒に帰ろうぜ」 「‥‥‥うん、わかった。終わったら連絡するね」 「お、おう‥‥‥そ、それじゃあ!!」 照れ隠しのように走って学校に向かう彼。 彼の背中を見届けたあと、私は胸に手を当てる ドクン‥ドクン‥ 鼓動が早い、ドキドキしてる。 今日彼の言葉を聞くまで、私は不安しかなかった。 彼に送ったLINE‥でも、彼はその日に返信はくれなかった。 そして、翌朝来たメッセージには「話がしたい」というメッセージ。 「ごめんなさい」と言われるんじゃないかと思っていた。 いつも通り、平静を装うのが辛かった。 ‥‥でも、もう関係ない。私は今日彼の思いを聞けたから。 この時、私は嬉し涙を浮かべながら満面の笑みを浮かべていたということを、彼は知る由もなかった。そして‥‥‥ 「行ってらっしゃい」 小さな私の声で呟いたこの言葉も、彼は気づかなかった。
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