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翌日──僕はカメラを持ってひまわり畑に来た。目的は写真と言うより、女の子に会うため。
ひまわりをかき分け、進んでいくと昨日と同じところに女の子は座っていた。昨日と服装は同じだが、汚れている感じではない。
「あっ……」
「こんにちは」
女の子は怯えた視線を向けていた。僕は口角をあげて、しゃがみこんだ。
「僕、真斗。おばあちゃん家に来てるからここにいるんだ。一人でツマラナイからここに来てるんだけど……君の名前は?」
「え……」
「後、五日しかいないんだけど、仲良くなれたらいいなって」
女の子はたじろいだように僕を見つめたが、ややあって小さく口を開いた。
「……陽葵、です」
「陽葵ちゃん? 可愛い名前だね」
名前を褒めると、ほんの少し彼女の表情が和らいだ。
「夏生まれなのと、お母さんがひまわりが好きだから」
「そうなんだ、ひまわりは好き?」
「好きだよ、ここは誰も来ないから隠れられるし」
じーっとセミが鳴いた。背の高いひまわりに隠れていたら、陽葵ちゃんは隠れられる。
「そうだ、陽葵ちゃんは何歳? 僕は十歳、小四」
「同じ……学校はいってない」
「同級生だね」
しっぽと猫耳がある陽葵ちゃんは学校には行っていないようだ。確かに、行きにくいだろうな。
それなら僕らは他愛のない会話をポツポツと交した。そして、東京に僕が帰るまでの時間は毎日会おう、と約束した。
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