サヨナラ

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サヨナラ

 来る日も僕らはひまわり畑で会った。日に日に彼女の口数と笑顔は増えていった。  僕は東京に住んでいること、友達がいないこと、将来は写真家になりたいことなどを話した。夢を話したのは陽葵ちゃんが初めてだった。  口下手で、人見知りの僕には友達と言える存在はいない。夏休みはおばあちゃん家にしかいかない。友達と遊ぶことは、陽葵ちゃんが初めてだ。  陽葵ちゃんも少しずつ事情を話してくれた。  ひまわり畑の近くでお母さんと二人暮らしということ、学校には行けていないこと、そして耳や尻尾は生まれつきだがお母さんには生えていないこと。  猫耳や尻尾が生えてきた理由は分からない、と小さく呟いていた。  その時の陽葵ちゃんの目は夜の海より暗い色をしていた。  陽葵ちゃんのことがわかっていくうちに、ある感情が芽生えてきた。  陽葵ちゃんと目が合うと、どきりとして視線が合わせられなくなる。話していると、ソワソワして落ち着かない。  別れてもずっと、陽葵ちゃんのことが脳裏にちらついている。おばあちゃんのおいしいご飯を食べていても、いつもより熱いお風呂に入っていても、浮かんでくるのは彼女の姿。  コレは初めての感情だ。  
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