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卒業当日
また、今年もこの日が来た。繰り返す卒業。意味不明な卒業。この群れを見るといつも思う。
卒業式を終えた生徒が、体育館を後にした。
一人が泣くと、まわりの友達も泣いた。その姿を見て、先生も保護者ももらい泣きをする。何がそんなに悲しいんだろうと、涙を誘うBGMに違和感を覚える。
「先輩。第二ボタンもらえますか」
振り返ると男女が向き合っていて、見慣れた光景を目にした。恥ずかしいのか、女の子のほうは付き添いの友達がそばにいる。
何の効力もないそのボタンにどんな意味があるのだろうと、ボクは去年もそんなことを思った。その心情に寄り添えないのは、まだ恋愛に興味を持たないボクのせいだ。
仮に〝ボタンをいつまで大事にしているか〟なんてあの女の子を追跡したら、三ヶ月も過ぎれば次の恋が始まって、きっとあのボタンはただの思い出に成り下がっているに違いない。
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