卒業当日

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 そもそも卒業って何なのか、何を卒業したのかみんなわかっているのだろうか。  既に辞めた国語の先生が、この体育館で言っていたのを思い出した。確か、この学校のいう卒業とは、中学の課程を修了したことだって。  だけどそれは先生や教育委員会の言い分であって、当の本人たちは何も自覚していないように見える。  彼らは入学の当初から同じ服を着る。ルールに則り、同じ場所で同じ教科書をもらい、みんなと同じタイミングで同じ話を聞く。けれど習得するリズムはそれぞれで、日が経つにつれ知力の高低差がうまれる。足りないところは自力で補わなければならない。  その三年間の積み重ねは大きく、環境と慣れは熱量を低減させ、人間関係は歪みを生じる。  ここでいう中学の課程とは何だろう。  結局のところ、課程を修了したというのは書類通過みたいなもので、彼らに聞いたところでを修了したと満足に言える者はおそらくいない。ボクは頭を掻きながら、空を眺めた。
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