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「綺麗に楽譜なぞるのが得意なヤツもいりゃ、お前みてーに頭ん中にある完成形に合わせんのが得意なヤツもいるってことだわ」
「へぇ」
他人の頭ん中はわかんねぇもんなぁ。
「ヴォーカリストだったZyeanがアレだぞ? マオはハナっからドラマーなんだで、追いつけるて」
「何すかその理論」
笑いながら、グラスを掲げて謝意と敬意を表する。師匠が和馬さんじゃなかったら、今の俺はいないからな。
喉を通る冷たい炭酸と程よい濃度のアルコールが、疲れのたまった体に沁みる。仕事も体力勝負だし、ドラムだってそうだ。体の使い方を最初に教えてもらったから、デタラメやってた時より全然楽になったけどさ。かおるさんがマッサージしてくれることもある。俺って最高に幸せモン。
「戻りましたー!」
入口ドアが開いたから振り向くと、おつかいに行ってた雅紀が戻ってきてた。
「おつかれさん」
迎えた和馬さんに買ってきたものとお釣りと領収書を渡すと、俺の顔を見る。
「マオ、ゴールデンウイークって休み決まったか?」
「まだだけど」
「5月4日休みとれるか?」
「行けると思う」
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