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電話が鳴っている夢を見た。
それが現実のものだと受け止めるのに、しばらくの時間を要した。
着信は何度かあったらしい。履歴を確認したらすべて夏見だったので、わたしは時間を確かめずに折り返しの電話をした。三コールで夏見の気だるそうな声が聞こえてきた。
「今何時だと思ってんですか、先輩」
「え? 何時?」
「十二時ですよ」
「昼の?」
「ええ、そうです」
「じゃあランチに行こう」
「いやいや、もうどこもランチタイムは終了してますって」
「別にランチじゃなくたっていつも安く食べられるところはあるよ」
「ええ、言いたいことはわかります。支度するのに三十分強かかりますから、先輩も人に見られてもいい最低限の身だしなみは整えてくださいね。じゃ」
「パヤパヤ」
「え? 何ですかそれ」
「了解の返事」
「宇宙人と交信しているのかと思いましたよ。っていうか話題そらさないでください」
「話題そらしたのはわたしじゃないよ」
夏見は一方的に通話を切ってしまった。彼女はいつもこんな調子だけど、わたしは別に嫌いじゃない。むしろお気に入りである。
シャワーを浴びて眠気を覚ますと、長くなった髪を斜めに編んで、服を選んだ。
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