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カレー味を先に食してしまったせいか、ノーマル味はかなり物足りない。そこに開封していないのに賞味期限が切れてしまったタバスコをまるごと一本振りかけたらあら不思議。なかなかパンチの効いた味になった。夏見は涙目になりながら切り出した。
「それで……、U.F.Oに乗せられた……、話なんですけどね……」
「ほお~。かなり情がこもってるね」
「違いますよ……。っていうか……、先輩は平気なんです?」
「え? 何が?」
「この辛さですよ……」と、夏見は烏龍茶をゴクゴクと飲み干し、舌をべえっと突き出した。「私の舌、ヤケドしてません? なんかめっちゃヒリヒリするんですけど」
「全然?」
「あ~……、ならいいんです。では、今度こそ本題に入りますね」
「ええ、どうぞ」
夏見はコホンと最もらしく咳払いをすると、背筋を伸ばして語り出した。
「私は子供の頃、団地に住んでいました。その時の話なので、今から十年前の話になります。ある夏の夜のことでした。いつものようにぐっすり眠っていたのですが、窓の外からやたらと眩しい光が入ってくるので、起き上がってカーテンを開けたんですね。そうしましたら、ベランダ越しに灰色のサイコロ型浮遊物体が浮いていたんです。光はその物体自身が放っているものでした。学校で不思議な話を聞いたり読んだりしていたので、ある程度の知識はありましたから、すぐにU.F.Oだと思いました。でも、なんで円盤型じゃないんだろうとも思いました」
「そうだね。確かに」
わたしがうんうんとうなづくと、夏見はぱっと顔を輝かせて続けた。
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