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落雷以外でこんな光が現れることなんて、ひとつしかない。
嫌な予感ってのは、大体当たっちまうもんだ。
絶体絶命の男の元に現れたのは、大きな力の化身だった。
「犯象者……!?」
犯象者。隠れて身につけたその力で悪事を働く、未登録の象使いだ。
巨躯から咆哮が放たれる、ただそれだけで人々は絶望する。
大きさってやつはどんな馬鹿でも分かる、この世で最もシンプルな力だからだ。
取り押さえていた男たちが、風に吹かれる砂粒のように散っていく。それに続くようにして、周囲の人間たちも我先にと走り始めた。
俺も急いでゾウ太を戻し、疑問を抱く。
さっきの咆哮、いくら何でもデカすぎる。
そもそも最初から象で脅せばよかったのに、どうしてあいつは呼ばなかったんだ?
百象隊の到着を遅らせるためか、それとも追い詰められるまで呼べなかったのか。
ちらり、と確認する。
「……マジかよ」
その象のこめかみから顎は、瑞々しい茶色に染まっていた。
オスの象は時々マストと呼ばれる興奮期に入る。こめかみ辺りから分泌液を流すのが目印で、そして――死ぬほど凶暴になる。
当然、マストの象は制御が不安定になるため、症状が治まるまで呼ぶことはきつく禁じられている。
あの野郎、やりやがった。
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