有象無象

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 恐ろしい咆哮と共に、怪物は暴れ始めた。  全力で逃げる。もう少しで狭い道がある、そこで撒いてから百象隊に……いや、もう誰かが呼んでいるか。  店を破壊された店主には気の毒だが、象に踏み潰されて死ぬよりはマシだろう。 (本当にそうか?)  胸の奥から、そんな声が聞こえた。 (そんなの、ただの妥協だろ。どうして理不尽を受け入れているんだよ。一番いいのは奪われないことだろう。何故不幸な目に遭った人間にマシだなんて言えるんだ。で済んで感謝しろって? 何もしてないやつが、安全な立場から説教してるだけじゃんかよ)  どうしようもないことは、せめてマシだと思うしかないだろ。上手く生きるには、分相応で生きることが大切なんだ。  わざわざ負け戦に特攻するのは馬鹿のやることだ。象の強さなんて見りゃ分かるだろ。あいつは象を持っていて、彼らは持っていない。だから彼らは逃げているんだ。何も間違ってない。 (じゃあ、どうしてお前は背中を向けているんだよ) 「……!」
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