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(どうしてお前は何もしない? あの時男がこっちに走ってきて、何故ぎょっとした? 自分は何もしなくていいと思ってたから?)
それは……。
(いつから誰かを呼ぶだけの人間になったんだ。お前は誰かに呼ばれるような人間になりたかったんだろ。そのためにずっと頑張ってきたんだろ)
ああ、いつから俺はこんなやつになっちまったんだろう。
昔から物わかりがいい方だった。どれだけ願っても現実は非情で、どうしようもないことはあるのだから。
だから何かを変えられる自分がほしかった。才能を信じたくて努力し続けた。
そして、気持ちだけではどうにもならない壁があることを知った。自分の乏しさを思い知った。
今も悔しいよ。
「あっ!」
女の子が転んだ。
誰も助けられない。戻れば、自分まで潰されてしまうから。
こんな時、ニマだったら。
(でも、今はお前しかいない)
そんな子象じゃ何もできない。そう馬鹿にされるうちに、自分までもがそう思うようになった。
弱くても、ゾウ太は大切な相棒。
違う。俺の相棒は役立たずなんかじゃない。
さっき男が喚いていたことが、脳裏に蘇る。
そうだ、他人の無責任な言葉に耳を貸すよりも。
俺は、俺だけは、ゾウ太を信じてやるべきだったんだ。
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