有象無象

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 すぐに暴動は制圧された。  象はムファが倒してしまい、逃げようとした犯人も、逆方向から回っていた隊員に捕まった。象使いは象と一心同体、出している間は遠くに離れることができないのだ。 「結局、お前が助けてくれなきゃあのまま死んでたよ。ありがとう」  隣に立つ天才にそう言う。俺はまだ腰が抜けている。 「説教は短めにしてくれると嬉しいんだけど」 「何言ってるんだ。むしろ感謝しかない」 「えっ」 「僕は間に合わなかった。君が勇気を出して立ち向かったから、あの子は無事だったんだ」 「でも、お前がいなきゃ結局……」  違う、とニマは続ける。 「できることの大小は関係ない。をしたかが大切なんだ。君が象を足止めした。だからあの子が逃げ、僕が来る時間を稼げた。すべては繋がっているんだ。死者ゼロの結果は誰が何と言おうと、君とゾウ太のおかげだよ。本当にありがとう」 「ニマ……」 「立てよ、ヒーロー」  手を差し出され、未だ震えながら立ち上がる。すると、先ほどの女の子が駆け寄ってきた。こういうことに慣れていないので困惑する。  ありがとう、と涙を流す彼女を見ていると、ようやく実感が湧いてきた。  こんな俺でも、誰かを助けることができたんだ。  思ってたのと少し違う形だけど、俺はやったんだ。  少しして、少女は何度も頭を下げて去ってゆく。 「ゾウゾウ」 「ん? ああ」  ゾウ太がすっと鼻を伸ばしてくる。  そういえば、まだお互いを褒めていない。 「……やったな、相棒」 「ゾウ!」  そう笑って、俺たちは手と鼻を叩き合わせた。
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