有象無象

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 もちろん、才能の距離と大きさは平等という訳ではない。呼び出せる象も、人によって多少体格の違いが現れる――現れるんだけどさ、こんなことある? どう考えてもの範疇じゃねえよ。    駄目なやつは、死に物狂いでやってもたかが知れている。そう世界に突きつけられた気がした。  もちろんこれでは、百象隊の試験をパスできるはずもなかった。  何かの間違いに期待して挑んだものの、あっさりと門前払いされてしまった。何ならあまりにも小さいので、召喚に一々許可申請をしなくていいと言われたくらいだ。ムカつくのでいつも出しっぱにしてやることにした。  誰もがそれを見て笑った。そんな小さな象は何の役にも立たないと。  ただ、笑われるのにはもうひとつ理由があった。 「ゾウ太、次だ」 「ゾウッ!」  ……俺の相棒、「ゾウ」って鳴くんだぜ。そりゃあみんなも笑うだろう。何だってこんな間抜けな鳴き声なんだ。  そんな訳で、俺は憧れの百象隊に落ち、こうして日々配達や雑用なんかをして暮らしている。  象を働かせて金を稼ぐどころか、象に飯を食わせるために主が働いている。何という立場の逆転だ。人にはそりゃあもう笑われる。これじゃどっちが主だか分かんないってさ。
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