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「ゾウ~」
ゾウ太は目をきらきらさせながら象たちを眺める。
人々は、同様に尊敬の眼差しを送っている。昔は俺もそうだった。いつかは自分もあの上に立って、手を振っているものだと思っていた。
でも、もう可能性ってやつは潰えてしまった。俺が死に物狂いで頑張った果てに出せたものは、ほんの小さなもの。憧れの百象隊に入るには、到底足りないちっぽけな何か。
ただ象を呼べないだけなら、まだ夢を見ることはできる。俺にはすごい才能が眠っているはずだって。
だが、こうもはっきりと目の前に示されてしまっては、もはや両の目を潰すしか現実逃避の道はない。
「……ニマ」
その最後尾の象に乗っているのは、俺よりも遅れて始め、すぐに象を出した同い年のニマ。たった一年で一番隊に昇格したらしい。歴代最年少の一番隊員、本物の天才だ。
すぐに結果を出して、どんどん先へ進んでいくニマ。
結局大したこともできず、必死に日銭を稼ぐ俺。
ガキの頃は一緒に遊んでいたのに、どうしてこうも差ができちまったんだ。
あれほど胸を躍らせていた象は、ただ心を曇らせるものとなった。
大きなそれを前にするたびに、自分との違いを物理的に感じて、周りの人々の冷めた目を感じて、胸がこう、どうしようもなくざわめくのだ。
「行こうぜ、ゾウ太」
「ゾウ?」
不思議そうに鳴くゾウ太の鼻を握って、立派な何かに背を向ける。
もう俺は、やれるだけのことはやったんだ。やってしまったんだ。
俺にはゾウ太がいる、ただそれだけでじゅうぶんじゃないか。
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