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「あ"ぁ"あ"あ"ぁ"ぁ"〜········」
詰んだ。
と、でも言うように翠の口からとんでもなく汚い声が発せられる。
魄がそれはため息なのかと聞けば肯定し再び汚い声を漏らす。
これが品格があった水神の一人娘で女性で巫女だなんて誰が思うだろうか。
焔は信じたくないと言う顔で翠を見る。
「ごめん。·····もしかしたら鳳来様が持ってるかも」
そこで何故に鳳来なのかと妹想いの兄は思ってしまう。
どう考えてもそういう流れの時に落としてしまったとしか考えられないだろう。
「······仕方ない····」
鳳来を探そう。
いつまでもこんな所にいる訳にもいかないし、戻るくらいなら僅かな可能性に賭けた方がいい。
それに翠はもう一度、彼女に会いたいと思った。
あの時に見た悲しげな·······それでいて懐かしむ様な表情が忘れられない。
「アイツら屋敷を燃やした極悪人だろ?」
心底関わりたくない。
焔は彼等に会うのを御免こうむりたいと言う姿勢だったが、翠が「テメェの妹がやらかした事だろうが」と、詰め寄るとぐうの音も出なくなり言葉を詰まらせた。
「匂いを辿ればきっと会えるはず」
翠の言葉にピシリと焔が固まり顔が引き攣る。
つまり、妹についた鳳来の香りを辿れとの事である。
「付いたって言うより染み付いたが正解では?」
「お前、それ以上言うな!あえて気にしないようにしてたのに!!」
絶対二人にナニかあっただろうと言うくらいの移り香だ。
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