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朝なのだろうか夜なのだろうか分からない暗い森の中で目を覚まし、焔はいくつかの火の玉を作り出し明かりを灯す。
結局、あれから野宿をする羽目になってしまった。
一つ運が良いと思ったのは、魄のおかげと言うのだろうか、二枚程の薄手の布団を拝借して持ってきていた事だ。
「そう言うのには本当にアンタは·········」
しっかりしていると言うのか、ちゃっかりしていると言うのだろうかと言いたかった翠だったがあえて言葉は飲み込んだ。
この子鬼は褒められていると勘違いをして調子にのるからだ。
しかし、犬二匹が「お前、小さいのに仕事出来る奴だな!」「えらいえらい!」と、それはそれは褒めまくってしまい、結局調子に乗ってしまった事は言うまでもない。
そんな三人を放っておいて川の水で喉を潤し、顔を洗う。
「とりあえずここから出ねぇとだな」
いつまでもこんな森の中を彷徨うわけには行かない。
しかし、開けた場所に行けたとしても南の行き方が分からなければ意味が無い。
「屋敷の門を背中にして北北東方面を目指せば小さな色町があるって言っていたよ」
鳳来から聞いた話。
そこは国に管理されていない所謂、穴場と言う所だ。
鳳来達はそこに行くと言っていた。
そこに行くと言う事はつまりだ。
「あいつらに会うかもしれねぇのかよ······」
もう二度と会いたくないと思う相手とまた会うかもしれないと考えるとげんなりする焔なのであった。
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