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電車から降りていつもの道を進んでいく、卒業する僕の他に三年生の姿は見当たらない。
ただいつも通りに歩いていると、後ろから元気な声がイヤホン越しに聞こえてきた。
「おっす! 先輩今日も早いっすね!」
陸上部の後輩で、こんな僕にもよく絡んでくれた。
「おはよう、練習頑張ってな」
「先輩もおめでとうございます! でも、卒業式の日なのに相変わらず崩れないっすね!」
「崩しちゃいけないんだよ」
「なんでですか?」
「さぁ……なんでだろう。ただ、崩さないのは難しい。崩すのは凄く簡単だけど」
「それわかります! 自分の調子を維持するのって難しいっすよね!」
後輩はそう言って時間を確認すると、最後に再度「おめでとうございます!」とだけ言って去っていく。
送別会に招かれているが、僕は断っていた。
なぜ? と、女子マネージャーに聞かれたが「ごめんと」とだけ伝えていっる。
僕は今日も決められた歩幅で足を動かしていく、早くもなく遅くもなくただただ一定の速さで……。
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