どんぐりになったお父さん

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どんぐりになったお父さん

ある日 僕のパパは どんぐりになっちゃったんだ。 僕の名前は陽太、6歳。 僕は、近くの公園に、お父さんと一緒に遊びに行ってたんだ。 そしたらさ、お父さんが、急に、どんぐりになっちゃってさ。 ビックリしたよ。 陽太『お父さん、お父さん、大丈夫?』 お父さん(どんぐり)『大丈夫だよ』どんぐりが笑顔で言ったような気がしたんだ。 陽太『あ~どうしよう。お父さんが、お父さんが』 そんな事を言っていたら知らないおばあさんが声をかけてくれたんだ。 知らないおばあさん『どうしたの?』って 陽太『お父さんがどんぐりになっちゃったんだ』 知らないおばあさんはキョトンとした顔をして黙った。 しばらくして 知らないおばあさん『お母さんは?』 陽太『家に居るよ』 知らないおばあさん『家は、解るの?』 陽太『うん。わかるよ。歩いてすぐだから、ほら、あの、おうち』 知らないおばあさん『お母さんが心配するから、おうちにお帰り』 陽太『うん。わかった。バイバイ』 知らないおばあさん『バイバイ』 陽太は、どんぐりになった父さんと一緒に家に帰った。 知らないおばあさんは公園の入り口から陽太が家に帰ってるか見ていた。 陽太『ただいま』 インターホンを鳴らす陽太。 母親『おかえり、あれ、お父さん、どこに行ったの?』 陽太『それがね、どんぐりになっちゃったんだ』 母親『そんなわけないでしょう。なに言ってるの。はぐれたの?』 陽太は(僕の言葉が通じないんだ。さっきの知らないおばさんもお母さんも僕の言葉を信じてくれない)と思った。 どんぐりお父さんを透明のビンに入れてラップで蓋をした。(ラップにつまようじで穴を開けて輪ゴムで止めた) お母さんに陽太は 陽太『絶対に、この、どんぐりを捨てないでね。捨てたら許さないからね』と言った お母さん『はい、はい』とめんどくさそうに言った。 お母さんは、お父さんが帰ってこないので警察に捜索届けを出した。 お母さんは必死に仕事を探していた。 陽太は、来る日も来る日もどんぐりに話しかけた。 今日は何があったんだよとか楽しかったよとか怒ったんだよとか。 お父さんは真剣に聞いてくれた。 いつものお父さんと一緒だ。 でも一緒に遊べれない。 お父さんと遊ぶの楽しかったのに。 お母さんだって寂しそうだし忙しそうだし仕事を見つけようと必死で 面接で不採用の度に落ち込んでいる そして休日は、お父さんがどこに行ったか探そうと、お母さんは、近所の人に話を聞いたり、 お父さんの写真を張ったビラを配り少しでも情報がないか必死になってるんだ。 僕達の生活は、どうなっていくんだろう? それにお父さんと一緒に遊びたいのに なんで お父さんは、どんぐりになんかなったんだよと陽太は思う。 どんぐりになった、お父さんも思う。 (俺が居ないと家族の生活がどうなっていくんだろう?家族は、どこか元気がない感じで寂しそう。陽太は『お父さんと遊びたい』と言っている。あー、人間に戻りたい)と。 みんな、辛いんだ。 どうしたら、お父さんは元に戻るんだろう? どんぐりをふれば元に戻るんかな? どんぐりをふってみる。 やっぱり無理だよね。 お母さんは寂しくなったのか?ちょっとおかしくなったのか?陽太の話を信じようとしてるのか? お母さんは、突然どんぐりに話しかけた。 お母さん『お父さん居なくなったわ。どこに行ったんだろう?どんぐりは知ってる?知ってるわけないか、なんだか、私、おかしいや、どこに行ったんだろう?お父さん、私、しんどいわ。早く帰ってきてくれないかな?私、なにか悪いことしたから、どこか行っちゃったのかな?』 陽太『それは、ちがうよ。お父さんは、お母さんの事を大好きだよ。僕の事も大好き。家族の事を大事に思ってるんだ。なにか事情があるんだよ。絶対に帰ってくるよ』 どんぐりになった、お父さんは、泣いていた。 ある時 お母さんが『お出掛けしよう』と言った。 陽太『うん。出掛けよう』と言った。 陽太は、どんぐりになった、お父さんも連れて行った。 お母さんは、お父さんと初めて出会った場所に行って、出会った頃の話をした。 お母さん『仕事場で出会ったんだ。お父さん仕事が出来て、かっこよかったんだよね。』 どんぐりになったお父さん『俺もお母さんに会った瞬間に一目惚れしたんだ』 それを聞いた陽太は笑った お母さん『なに?どうしたの?急に笑って。怖いよ。』 陽太には、お父さんの話が解っても、お母さんには、お父さんの話は解らなかった。 次に居酒屋さんの前に立ち お母さんは『会社の忘年会でここの居酒屋さんで酔っぱらってたからか余計に話が盛り上がって連絡先を交換したんだよね』 どんぐりになったお父さんは頷いていた。 今度は映画館に連れて来られた。 お母さん『ここね、お父さんと初デートしたところなんだ』 どんぐりお父さんの目には涙がたまっている。 陽太『お父さん泣かないで』と、どんぐりお父さんに声をかける。 お母さん『なに言ってるの?陽太、大丈夫?』と言うと。 どんぐりが濡れている。 お母さん『どんぐり濡れてるけど、陽太の汗?』 陽太『違うよ。だから、お父さんなんだってば』 お母さんは、どんぐりをじっとみる。 お母さん『そう』小さい声で言った。 お母さんは信じられないけど、どこか信じられるような、信じたいような気持ちでいた。 お母さん『今日は、ここまでで帰ろうか。晩御飯は皆が大好きなカレーライスにしようかな』 陽太は、喜んだ。 それから、いつもの日常に戻った。 今日も陽太は幼稚園に行く。 そして帰ったら、陽太は、どんぐりお父さんと話すんだ。 いつもと変わったことが1つだけあった。 それは、お母さんが、どんぐりお父さんに話しかけていること。 どんぐりお父さんが陽太に どんぐりお父さん『最近ね、お母さんが話しかけてくれるんだ』 休みの日に大きい公園に連れていかれた。 ここは何回も来たことがある。 陽太も馴染みのある場所だ。 お母さん『陽太がお腹に居る時は御飯が食べられない時期もあったし臭いに敏感で嗚咽しそうになったり、お腹も重かった。でも、お腹の中で動いてる時があって、それが嬉しかったんだ。お父さんにお母さんが『お腹の中で赤ちゃん蹴ってるよ』って言ったら、お腹に手をあてて確認してたよ。お父さんもお腹に居る陽太に話しかけたりもしてたんだよ。』 陽太『なんて話しかけてたの?』 お母さん『お父さんね『元気か?元気に産まれてくるんだぞ』って話しかけてたよ。毎日、話しかけてたよ。『元気に育ってね。産まれて大きくなったらサッカーしようね』っとも言ってたな』 お母さんは途中、泣きながらも一生懸命、陽太に伝えようとした。 お母さん『妊娠中、つわりとかで辛いのもあったし精神的に不安定でお父さんに強く言ってしまったこともあったな。お父さんは、その時、どう思ってたのかな?私が精神的に不安定でもお父さんは、寄り添ってくれて傍に居てくれて有難かったよ』 どんぐりお父さんは泣いていた。 お母さん『出産した時は、お父さん、どんな気持ちだったのかな?陽太が首座りして、お座りして、ハイハイして、つかまり立ちして、つたえ歩きして、歩きだすようになって話すようになって、そういう事が1つずつ出来るようになった時にお父さんは、どんな気持ちだったんだろうね?』 陽太『きっと嬉しかったと思うよ』 お母さん『これからもずっとお父さんと色んな思い出作りたかったのに…』 陽太は、お母さんをぎゅっと抱きしめた。 2人は家に帰った。 陽太は、やらかしてしまった。 話に夢中になり、どんぐりお父さんをおいていってしまったのだ。 どんぐりお父さんは家族との思い出を思い出してひとしきり泣いた。 そしたら元の姿に戻っていた。 歩いてお父さんは家に帰った。 お父さんは風呂に入ってないから臭かった。 でもお母さんは『おかえり』と言って抱きしめた。  END
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