三月の彼に

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 終業式直前、乾いた空に凍てつく風の吹く十二月。  田中さんの取り巻きの男子たちが渡り廊下で話しているのが聞こえる。 「間宮って、父親半殺しにしたらしいよ」 「うわ、怖え。そんなやつ、学校に来させんなよな」 「あの首の傷、そのときの勲章だって自慢してるらしいぜ」  ――もう痛くないよ。昔、親父と喧嘩してやられたんだ。  ――どうして、喧嘩したの?  ――……母さんが殴られてたから。  あの傷がどのくらい間宮君を痛めつけ、苦しめたのか――私には全然想像できていないかもしれない。そのほんのわずかな痛みの一部すら、同じように感じることはできないかもしれない。  でも、あの傷が守ろうとしたもの、そして決して強くはない間宮君自身をその優しさがつくっていることだけはわかる。痛いほどに――。  私は、思わず前に進み出て彼らの正面に立つ。 「間宮君は、そんな人じゃない」  声を絞り出すようにそう言うと、 「はあ? お前、間宮とできてんの?」  ケラケラ笑ったかと思うと、そのうちの一人が後ろを向いて、一瞬肩を震わせ表情を途端に変える。 「間宮……」  彼らの後ろに間宮君が立っていた。
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