三月の彼に

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 それから何週間も、間宮君は学校に来なかった。  その間、私は先生に何度も訴えた。間宮君の行動には理由があるのだと。けれど、それで何かが変わるわけではなく、冬休みを迎え、年が明けても間宮君は学校へ戻っては来なかった。 「どんな理由であれ、暴力を許すわけにはいきません」  先生のその言葉に、私は反論できなかった。  それから、受験シーズンを迎え、間宮君がどうしているのか、情報がないまま時間だけが過ぎていった。  間宮君が退学になり、卒業できなくなったと聞いたのは、第一志望の合格発表が出て、二月も終わりに近づいていた頃だった。  段々と日が長くなり、春めいた陽気に包まれ、三月という季節が「終わり」と、新しい何かの「始まり」を予感させた。もういじめられることもないし、大学では新しい友達を作ればいい。でも、私の気持ちが晴れることはなく心にいつまでも雲がかかっていた。  私の訴えは、間宮君を救わなかった。  ただただ、どうしようもなく、私は無力だった。
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