三月の彼に

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 卒業式の日までに桜は咲かなかった。  間宮君のことが気になっていたが、行方は一向にわからなかった。先生たちも、もう関わりたくない、というように間宮君の情報も、今後のことも、一切教えてくれなかった。  桜を咲かせなかった木々を恨めしく見上げると、春の空はどんよりと、私の歩幅に合わせて移ろっていった。卒業証書の入った筒を抱え校庭を歩いていると、校門の外、向こう側に見えたのは、間宮君の姿だった。 「間宮君?」  私は叫んで駆け寄る。大きめの自転車に(またが)ったままの間宮君はいつもの感じで「よっ」とやる。 「間宮君、ごめん……私のせいで……どうして」 「何が藤波のせいなの?」  間宮君がキョトンとした顔をするので 「だって、卒業……できなかった」 「何言ってんの、藤波は関係ないよ。もともと出席日数、足りなかったし」 「でも……」 「卒業、おめでとうな」 「間宮君……」 「受験は? 受かったの?」 「うん……」 「さすが、藤波だな」  間宮君はそう言いながら微笑んで、私の頭をポンッと撫でた。 「どうして、ここに?」 「うん? あー、たまたま通りがかっただけ。今日だったんだな。卒業式。藤波に会えてラッキーだったよ」 「間宮君」 「元気でな」  そう言ってキュッとした笑顔を向けると、間宮君は去っていってしまった。
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