三月の彼に

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 あれから十二年――。  間宮君は元気にしているだろうか。 「桜えびとキャベツのオイルパスタ、お待たせしました」  運ばれてきたそれを一口食べると、口の中にキャベツのみずみずしさと桜えびの香ばしさが一気に広がった。 「美味しい!」  遠野先輩が言うので、私も「本当に」と答える。    食後のコーヒーを運んできてくれた店員さんが、頼んでいないのにデザートのプリンもテーブルに置く。 「これ……」  戸惑っていると、 「シェフからのサービスです。今日のランチ、お二人が最後のお客様ですので」  いつの間にか、店内のお客さんは帰っていた。 「ありがとうございます」  キッチンの方を見ながら、 「この間まで抱えてた案件、かなり重かったから、ご褒美ね」  遠野先輩がウインクする。  高校を卒業後、大学の法学部に進んだ私は弁護士になった。
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