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お会計を済ませてからトイレに立ち、テラス席の方へ戻る途中、ふとキッチンを見やる。お皿や鍋の触れ合う音がカラカラとする中で、ひときわ背が高く水場に向かうシェフの男性の首筋には、見覚えのある傷が――。
――ごめん、怖いよな?
――怖くは……ないけど。痛そう。
――もう痛くないよ。昔、親父と喧嘩してやられたんだ。
あの傷――。
一瞬、顔を上げた彼と目が合う。
間宮君に、似ている。
どこかで元気にしてるといいな。
幸せだといいな。
笑ってるといいな。
ずっと、間宮君のことを、そんなふうに思っていた。
そう思って、過ごしてきた。
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