三月の彼に

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 お会計を済ませてからトイレに立ち、テラス席の方へ戻る途中、ふとキッチンを見やる。お皿や鍋の触れ合う音がカラカラとする中で、ひときわ背が高く水場に向かうシェフの男性の首筋には、見覚えのある傷が――。  ――ごめん、怖いよな?  ――怖くは……ないけど。痛そう。  ――もう痛くないよ。昔、親父と喧嘩してやられたんだ。  あの傷――。  一瞬、顔を上げた彼と目が合う。  間宮君に、似ている。  どこかで元気にしてるといいな。  幸せだといいな。  笑ってるといいな。  ずっと、間宮君のことを、そんなふうに思っていた。  そう思って、過ごしてきた。
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