三月の彼に

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 父の厳格な教育方針のもと、志望校に合格すること以外、自分の存在意義を確かめる方法のなかった私は、大学受験に失敗したら人生がその瞬間に終わるのだと、その頃、本気で思っていた。  受験勉強にひた走る、そんな私の真面目くさった態度が気に入らなかったのか、今思えば、あれは典型的ないじめというもので、つまらないルーレットで、私は一学期から標的にされていた。    教科書がなくなったかと思えばゴミ箱に捨てられていたり、提出したはずの宿題がなぜか消えていたり、中間テストでカンニングの濡れ衣を着せられそうになったり。  二学期になっても、いじめは終わらなかった。  十月の体育祭当日、今度なくなったのは体育着だった。体育の授業は決して得意でなかったし一緒に応援できる友達がいるわけでもなかったので、体育祭自体を特別楽しみにしていたわけではない。だけど、そのとき、父からのプレッシャーとクラスのいじめとで、私の精神は崩壊しかかっていた。
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